人と違うという生きづらさとの中で

オムニバス(エッセイ風小説)

人と違うという生きづらさとの中で

人と違うという孤独

 人と違うという生きづらさの中で、私達は悩んだり、傷ついたり、孤独を感じる。

 ああ、やっぱり私は人と違うんだな。
 ああ、結局この人とは分かり合えないんだな。
 そのように思うたびに、私達はひどく孤独を感じる。

人と違うということ

 人はみな別々の価値観を持った別々の存在だ。
 けれど、それでも人は誰かと共感し誰かと「同じなんだ」と思いたい。

 同じ映画で感動し、同じ音楽で心が踊り、同じ小説で心を打たれたい。
 同じことで笑い同じことで泣き、同じことで腹を立てる。
 それらを共有し、生きていく上での試行錯誤や四苦八苦に、「同じなんだ」と思いたい。
 そういうときに、自分は一人じゃないと思えるときがある。

 私達は別々の人間でありながら、同じ人間であることを求める。

人と同じということ

 一方で、私達は他人と同じ自分であることに落胆することもある。

 誰もが自分は代えのきかない、かけがえのない存在だと思いたい。
 自分にしかない才能があり、独特の感性があり、それが周囲を変える力となる。
 「誰か」ではない「自分」は魅力的だ。
 だから私達は自分が平凡であることやありふれていること、誰かと同じであることを知るたびに虚しさを感じる。

人との違い

 人と違うということが、価値を生み出してくれることがある。
 けれど人と違うということが、人を孤独にすることもある。
 私達は誰かと異なりながら、どこかで「一緒なんだ」と思いたい。
 大切な価値観を共有し、違いを持ちながらも「言わなくても伝わる何か」を欲する。

 些細な違いが大きく見えることもあれば、大きな違いが些細に見えることもある。

 結局のところそれは、私達の心が「独り」と思うかどうかなのだ。
 人は独りと感じるとき、どのような「同じ」も慰めにはならない。
 反対に自分と世界が何かの形でつながっていると、自分の違いを個性と受け止めることができる。

 人は違うから孤独を感じるのではなく、孤独を感じているから違いを意識するのかもしれない。

 それは頭でわかっても心に落とし込むには時間がかかる、教訓の一つだ。

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