僕達にとって大きなことと小さなこと

連載小説

本編

僕達にとって大きなことと小さなこと

「浅田?」
 高橋と再び会ったのは高校一年の冬だった。学校から家に帰る途中の電車の駅。改札を抜けようと定期を出していると、後ろから声をかけられる。振り向けば、そこには高校生の高橋がいた。お互い見た目は多少変わったけれど、お互いがお互いであることはわかる。人はなにをもって、その人をその人と確信するのだろう。
「高橋?」僕は言う。
「すごい偶然。久しぶりだね」
「うん、ほんと。小学校以来か」
 僕は高橋と話す中で、高橋が小学生の頃のように僕に気楽に話してくれていることを感じる。高橋は変わっていない。僕は変わっただろうか。高橋と話していると、久しぶりに会ったのになんだか気楽で、少なくとも僕自身は高橋に対して前と変わらず接することができている感覚を覚える。僕達は近況を話し、お互い今帰りであることと、後に用事もないからこうしてダラダラと話せていることがわかる。

 駅に面した道路をバスが通り過ぎる。この駅のバス停から出発するバスで、僕と同じ高校の生徒で混み合ったバスだ。バスの中にはクラスメイトもいて、僕に視線を向けていることはわかった。別の高校の制服を着た女子と話す僕を見て、何か勘違いをしている気がする。
「ちょっと中に入らない?」僕は駅の敷地内に併設されたベンチを指差す。周囲にコーヒーショップだとかクレープ屋が並ぶ、ちょっとしたスペースだ。駅周辺にはカフェもあるのだが、さすがにそこまでの誘いはできなかった。
「奢ってくれるの?」高橋は冗談っぽく言う。
「そうそう」僕は軽く流すように返事をする。

 結局僕は自分のカフェラテと高橋のキャラメルマキアートを支払って席に座る。
「ありがとう」高橋は言う。
「引っ越し祝い」僕は言う。
「え?」
「卒業式の後、高橋引っ越したから」
「なにそれ。今更じゃん」高橋は笑う。
「でもそれ以来会ってはいない」
「そだね」
「あのさ、今更だけど誘って大丈夫だった?」
「彼氏はいないの?ってこと?」
「まあ、そういうこと」
「どっちでしょ?」
「そう聞くってことはいるってことかな」
「はずれ。みんな私に彼氏がいるって勝手に決めつけるよね。覚えてる? 小六のとき。私が寄り道するたびにみんな私に年上の彼氏がいるって言ってたよね」
 高橋の言う寄り道とは、あの白い家のことだろう。
「今だから言うけど、あれは高橋も思わせぶりだったよ」僕は言う。
「知ってる。今だからそう思えるけど。でも浅田は私をからかわなかったよね。あの家ね、私の叔母さんの家なの。お母さんの妹。お母さん仕事しているから、よく叔母さんの家で遊んでた」
「そうなんだ」
「ねぇ、浅田は彼女いるの?」
「いない」
「そっか」
「あのさ、LINE聞いていい?」僕は言う。
「携帯買ったんだ?」高橋は笑った。

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