買って良かった物が毎回あるミニマリスト

オムニバス(エッセイ風小説)

買って良かった物が毎回あるミニマリスト

物を買うこと

 良い物を長く使うというのは、丁寧な暮らしやいわゆるミニマリストによくある価値観なのではないかと思う。
 良い物を長く使うということは、物を買うことよりもすでに買った物を使うことのほうが多くなるのではないか。
 けれど世の中には、毎月のように「買って良かった物」を紹介する人は多い。

良い物を長く使うためには

 良い物を長く使うためには、自分の価値観や生活スタイルを知ることが必要だと思う。

 どんなに良い物を買っても、自分の生活スタイルがコロコロ変わっては物を長く使うことはできないだろう。
 今日ワンピースが自分の一番の洋服だと思っていた人が、明日になるとジーンズが最高の私服であると考えていては、物を吟味し長期的に良い物を買うことは難しいだろう。
 もちろん、お金とクローゼットのスペースが無限にある人は別かもしれないが。

価値観が変わること

 価値観が変わることは悪いことではない。人は変わっていくものだ。

 しかし、人は往々にして「自分は変わらない」と思いがちだ。
 自分の中には揺るぎない芯のようなものがあり、それはずっと変わらない。
 そう思いがちだ。

 あるときはそうかもしれないが、そうでないときもある。
 人も世界も無常であり、常に同じと保証されるものはない。

 不思議なことに、「自分が変わってしまうかも」と認めている人ほど、良い物を長く使えている場合がある。
 一方で、「自分の価値観は変わらない」と決めつけている人ほど、常に何かを買っている。

結局のところ

 結局のところ、「買って良かった物」がいつもあり、毎月のように物が入れ替わる人は、自分が変わらないと早計に決めているか、それがビジネスになっているかのどちらかかもしれない。

 つまり、「良い物を長く使えている自分」を演じ、「買って良かった物」を紹介して、それを誰かが買う。
 良い物を長く使うのではなく、そういう循環を楽しんでいる人もいる。
 「良い物を長く使う」と、「循環する物を楽しむ」は、また異なった生活スタイルだと思う。
 どちらが良い・悪いではない。ただ、自分はどちらの生活が好きなのか、あの人はどちらの生活なのか、そういうことを考えるのは、幾分日々の生活を生きやすくしてくれると思う。

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