デウス・エクス・マキナとは
デウス・エクス・マキナとは物語における技法の一つである。
その物語の世界観において超越した要素で半ば強引に物語を結末へ導く手法を指す。
例えば主人公が魔王と戦い窮地に立つ中、突如として強力な魔法の石が登場し魔王を倒す。戦いで壊滅した街も元通りになり、一度死んだ仲間達も蘇り、無事にハッピーエンド。
こういった展開は典型的なデウス・エクス・マキナと言えるだろう。
デウス・エクス・マキナはその語感から「絶対的な力を持った存在によるどんでん返し」をイメージするかもしれないが、必ずしも絶対的な力によるものだけではない。
実は登場人物がみていた夢だったという「夢オチ」や、(まったく描写されていなかったにもかかわらず)相手の決定的な弱点が判明し一発逆転をするなどもデウス・エクス・マキナの一例と言えるだろう。
デウス・エクス・マキナはそういった脈絡のないどんでん返し、急速に迎えるクライマックスのための便宜的な理由を指す場合が多い。
このため、たとえ展開が壮大で急なものであっても、それが緻密な伏線の回収により成り立つ筋が通ったものであればそれはデウス・エクス・マキナとは言えないだろう。
デウス・エクス・マキナは以上のような性質から、どちらかと言えば粗悪な物語の展開だと読者から評価されることが多い。要するにご都合主義が過ぎるというわけだ。
「それならなんでもありじゃないか」と批判されやすいデウス・エクス・マキナを用いて良い物語を作ることは、なかなか難易度が高いと言えるだろう。
デウス・エクス・マキナは物語だけでなく、日常生活にも潜んでいると個人的には思っている。
たとえば私が会社の同僚達と進めていた企画は先程上司の気まぐれで頓挫したわけだが、これも一種のデウス・エクス・マキナと言えるのではないだろうか。
ここでデウス・エクス・マキナの性質を整理しよう。デウス・エクス・マキナは以下のような性質を持つ。
- 筋の通らない唐突な要素である
- 物語を急速に結末へもってく。理由から結末が導かれるのではなく、結末のために理由が発生する
- これらはご都合主義の印象が拭えず周囲の理解が得にくい
- 絶対的な力のある存在というわけではない
多くの社会人にとって、会社の上司は一種のデウス・エクス・マキナではないだろうか。