簡単なことを難しく考える人

オムニバス(エッセイ風小説)

簡単なことを難しく考える人

単純なことを複雑に考えてしまう人

 簡単なことをわざわざ難しく考えてしまう人がいる。

 よく使われる言い回しに、
 三流の人は簡単なことを難しく考え、
 二流の人は難しいことを難しいまま考え、
 一流の人は難しいことを簡単に考えることができる。

 というものがある。

 そしてここで言う「難しいことを簡単に考える」とは、物事を軽んじることではない。
 一流の人は難しいことを簡単にできるよう、視点を変えたり課題を分解したりするのがうまいのだ。

一流・二流・三流の考え方

 一流の人は難しいことを簡単に考えることができる。
 これはつまり、問題のポイントを押さえシンプルな形に落とし込めるということだ。
 そういう人は独創性があり、目の前の問題を多数派とはまた違った視点で見ることができる。

 二流の人は難しいことを難しいまま取り組んでしまう。
 つまり言われたことを言われた方法でやるということだ。真面目で組織の中では重宝されるが、オリジナリティや向上心に欠ける。

 三流の人は簡単なことをわざわざ難しく考えてしまう。
 物事の簡単さを流すことができず、あれやこれやと考えてしまう。

シンプルに考えられない人

 物事をシンプルにしていくのは大事な能力だ。

 世の中には物事を複雑に考えて、周りを振り回す人がいる。
 複雑な物事を複雑なまま理解しようとするのはまだマシだが、中には簡単な物事をわざわざ複雑にする人がいる。

 私達は、そういった人達にある意味で「騙されない」力が必要だ。

物事の難しさ

 簡単なことを難しく考える人は、真面目なのかもしれないし、プライドが高いのかもしれない。

 簡単なことでもあれやこれやと考えだして、様々な可能性を考慮し、身動きが取れなくなる。
 真面目であることは必ずしもシンプルな答えに行きつけるわけではない。

 プライドが高い人は、簡単なことを複雑に考えてしまうことがしばしばある。
 要するに、「こんなに難しいことに取り組んでいる自分」を演じたいためだ。

くだらないこと

 簡単なことを難しく考える人の類で、
 くだらないことをさも重要なことのように語る人もいる。


 これも結局、自分がやっていることを肯定したことの表れだ。

 誰だって、自分のやっていることが簡単でくだらないことだと思いたくないし、それが積み重なったのが自分の人生だと思いたくはない。
 自分は自分にしかできないことをやっていて、難解なことをこなしながら自分の人生が積み重なっている。そういうふうに思いたい。
 そのためには、自分が今やっている目の前のことが「くだらないこと」であってはいけないのだ。

シンプルであるままに

 けれど、簡単な物事をどれだけ複雑に演出しようとも、それは張りぼてにしかならないだろう。

 私達は、物事をシンプルにとらえる決意のようなものが必要だ。
 簡単な物事を簡単な物事だと認める。
 そうすることで見えてくるものもある。

 何かを複雑に言うことは、何かをはぐらかすことにも使われる。
 だから私達はある種の複雑さに逃げてはいけない。

 もちろん、世の中は複雑だ。
 安易に物事をシンプルにとらえては、本質を見失うことがあるかもしれない。

 だからこそ、複雑な物事をシンプルな形に落とし込むことは一種の能力なのだ。
 そういう能力を磨くことが、人生を豊かにしてくれるのではないだろうか。

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