お酒は20歳になってから

オムニバス(エッセイ風小説)

お酒は20歳になってから

お酒を飲める年齢

 お酒は二十歳になっていから。
 なぜならお酒は身体に害を与える可能性があるから。
 適量のお酒を成熟した身体の成人が飲むことは、身体に致命的な何かを与えることはないだろう。
 しかし身体が成長途中の、例えば二十歳未満の人間であれば、飲酒は少し不安が残るかもしれない。

失うことを許容するということ

 大人であっても、過度の飲酒は身体に害を与えるだろう。
 たとえ少量であっても、状況によっては控えたほうがいいかもしれない。

 私達が体調を崩し、病院に行けば、医者に必ずと言っていいほど聞かれるのが飲酒と喫煙の習慣の有無。
 適量の飲酒は健康に寄与するとも言われるが、やはりリターンよりもリスクが挙げられることが多い。
 それでも私達は飲酒をする。
 気分を変えたいときや、人と語り合いたいとき、あるいはカッコよさとかそういうものを味わいたいとき。私達は飲酒をする。

 それは一種の自己責任だ。
 お酒を飲むことで、人によっては健康に影響を与えるかもしれない。
 あるいは時間やお金を消費するかもしれない。
 あるいは酩酊することで、目の前の人との人間関係に関してトラブルを起こすかもしれない。

 私達は、そういったリスクを自分の責任の下で許容する。

 私達はある年齢、ある時期から、人生が右肩上がりばかりでないことを許容する。
 例えば加齢によって少しずつ衰えていく肉体とか、
 例えば時間を重ねる中で大きくは描けない夢とか、
 例えば社会と密接に関わることで身動きが取れない人間関係とか、
 そういうものの中で、自分の中の何かを少しずつ消費しながら緩やかに生きることもまた人生だと知る。

 お酒を飲むことで健康になるとは限らない。むしろ害になる可能性もある。
 しかし、少しくらい健康を害してたとしても、日常をある程度つつがなく送ることができれば、それで何か問題があるのだろうか。それで問題がないと思えるのは、その人が少し大人になったということかもしれないのだ。

子供がお酒を飲むということ

 しかし子供は違うだろう。
 若い人は、自分の人生に右肩上がりの変化をまだ信じることができる。

 もちろん口では絶望を、達観を、冷静を語るかもしれない。
 しかし、何かを失ったとき、その悲しみが若い人は大きい。
 それはまだ、自分がたくさんの若さを持っているからだ。

 そういった時期に、お酒を飲むべきではないのかもしれない。

 お酒は二十歳になってから。

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