【ショートショート集】秀逸なオチ

オムニバス(ショートショート)

秀逸のオチのショートショート集

秀逸なオチ

「秀逸(しゅういつ)とは、抜きんでて優れていることを指す言葉だよ。『秀逸なアイディア』とか『秀逸なコメント』とか、人に対してよりはどちらかというと何かの発想に対して言うことが多いかな」修一はそう言った。
「そうなんだ。じゃあ『秀逸』というのは褒めるときに使う言葉ってこと?」翔一は聞いた。
「まあそうだね」修一は言う。「例えば翔一が作ったアプリは秀逸だよ。僕も使っているけれど、本当に便利だ。翔一が起業して成功するわけだ」
「修一だって、学部の中では一番成績優秀で有名大企業に就職したのに、会社で不倫をして離婚してそれがきっかけでリストラされて無職だろ? まさに秀逸な落ちだよ」
「秀逸は褒め言葉だって言ったよな?」

平坦なミチ

 私と夫は今でこそ穏やかな日常を過ごしているが、そこに至るまでは決して平坦な道ではなかった。
 まず、この不景気で夫の勤めていた会社が倒産し、夫は当時就職活動中だった。
 逆に私は過労がたたって身体を壊し、療養中であった。
 そのような状況だったから、当然ながらお互いの両親とも結婚は反対だった。
 私達は二人が一緒になるために、問題を一つ一つ解決していった。夫は仕事を見つけ、私は身体を治し、両親と話し合い円満な結婚を目指した。
 それは大変なことだった。けれどこうしてまとめてみると、他人から見れば「よくある話」かもしれない。「もっと大変な状況」の夫婦もいるかもしれない。
 結局のところ、私達はみんなそれぞれ自分の人生(物語)を生きている。
 他人にとっては平坦に見える道でも、本人にとっては険しい道であることもある。その逆もあるかもしれない。
 自分が歩いている道が平坦なのか険しいのかはわからない。けれど少なくとも、誰にとっても人生は初めてだ。平坦かもしれないし険しいかもしれない未知に、私達は一つずつ出会っていく。

深遠なトキ

 眠るとき、僕は頭の中でトキをイメージする。一時期は絶滅の危機に瀕していた、あのトキだ。
 なぜトキをイメージするのか。それに特に理由はない。子供の頃見た繁殖のドキュメンタリーの影響か、幼い頃に見た図鑑の影響か、僕にとってトキはなんだか特別な鳥だった。
 白い羽と赤い顔のコントラストはなんとも神秘的だ。
 僕は布団に入ってボーっとしているとき、トキが青空を飛んでいるイメージをする。その取り留めのない空想が、僕をいつの間にか眠りに誘う。
 僕はとりあえず、トキが空を飛ぶイメージを頭に浮かべる。そして時間をやり過ごす。
 僕は寝坊し、学校はあと五分で始まる。ここまで明らかな寝坊をすると、どうあがいても遅刻だ。

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