遺伝子組み換えでないの表示

オムニバス(エッセイ風小説)

遺伝子組み換え表示

変化する制度

 「遺伝子組み換えでない」という表記に関して、制度がより厳しくなるようだ。

 遺伝子組み換えでない商品を作ろうとしても、製造ラインで意図せず遺伝子組み換え食品が混ざってしまうリスクはある。
 このため1%以下であれば意図せぬ混入があっても「遺伝子組み換えでない」とこれまでは表記できた。

 しかし新しい制度では、ほぼ0%、つまり「不検出」にしないと「遺伝子組み換えでない」と表示できなくなる。

制度の難しさ

 新しい制度は(特に遺伝子組み換え食品を購入したくない)消費者にとって朗報と思える。
 しかし考えは様々なようだ。
 例えば「遺伝子組み換えでない」の表記が厳しくなる一方で、「遺伝子組み換えた食品を使っている」ほうの商品の制度に変化がない点に問題提起をする人もいる。

定義をめぐって

 人はというか人類はというか社会は、常にこの「定義の難しさ」に晒されている気がする。

 遺伝子組み換え食品を摂取することが良いか悪いかとは別に、
 遺伝子組み換え食品とは何か、遺伝子組み換え食品が入っている商品とは何かを定めることに難航する。

 様々な考え方を持つ人が一緒に暮らす社会において、定義を決めることは大切であり難しい。

 5%の混入が許容できる人もいればできない人もいる。
 0%が望ましいとする人もいればそれは現実的なじゃいと批判する人もいる。

 原材料に1%だけ遺伝子組み換え食品が入った商品は遺伝子組み換え食品なのか。0.001%だったらどうだろう。

 私達は常に定義を決め、その定義の抜け道と抜け道をふさぐ壁のようなものを考えていく。

 それは遺伝子組み換え食品は安全か否かという議論とは、(大切ではあるが)また少し違う議論だ。

 私達は価値観の違うお互いと同じ社会で生きるために、物事を定義しないといけない。しかし世の中の多くのことはグラデーションで成り立っている。どこからどこまでと線を引くことはできない。そこに線を引けば、それは違うそれは正しいという議論を避けられない。
 私達は、なんとも複雑な世の中で生きている。

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