金の斧と銀の斧のような池
ある日男性がスマホを見ながら公園の歩道を散歩していると、うっかり手を滑らせて池にスマホを落としてしまった。
男性は自分が手を滑らせたことを非常に悔やんだ。
池はそこまで大きくはないものの深さはあり、とてもではないが探せそうもない。
男性が後悔しながら立ち尽くしていると、池の水面がごくわずかに、淡く光り出した。
そして池の中からなんと女性が現れた。
「あなたが落としたのはこの金のスマホですか?それともこの銀のスマホですか?」
池の女神は男性にそういった。男性は驚きながらも答えた。
「僕が落としたのは黒いケースが付いた普通のスマホです」
女神は一旦池の中に戻り、再び戻ってきた。今度は金と銀のスマホだけでなく、黒いケースが付いた普通のスマホも持っている。
「あなたが落としたのはこのスマホですか?」女神は聞いた。
「はい、そうです」
すると女神は微笑んでこう言った。
「あなたは正直者ですね。正直なあなたには金のスマホと銀のスマホもあげましょう」
こうして男性は自分のスマホだけでなく、純金と純銀のスマホも手に入れた。
その様子をこっそり見ていた欲張りな男性がいた。
欲張りな男性は誰もいなくなったことを確認した後に池に駆け寄り、勢いよく自分のスマホを池に投げ捨てた。
「あなたが落としたのはこの金のスマホですか?それともこの銀のスマホですか?」
池の中から女神が現れ、欲張りな男にそう聞いた。
「はい、そうです。私が落としたのはその金のスマホと銀のスマホです。ありがとうございます」
男はまくしたてるように言った。すると女神は途端に冷たい表情を浮かべてこう言った。
「あなたはどうやら嘘をついているようですね。嘘をつくこと、欲張ることは良いことではありません。嘘つきで欲張りなあなたには金のスマホも銀のスマホもあげません。あなたが落とした本当のスマホを探すお手伝いもしません。少し反省しなさい」
そういって女神は池の中に消えていった。欲張りな男は自分のスマホを失くしただけでなく、金のスマホも銀のスマホももらえず、手元に何も残らなかった。
女神が池に消えた直後、欲張りな男の下に彼女が来た。
こうして欲張りな男は間一髪のところで浮気の証拠となるスマホを隠滅することができた。