ハムスターの脱走防止のために

オムニバス(エッセイ風小説)

ハムスターが脱走しないために

脱走防止のために気をつけること

 私がハムスターを飼うとき、まずハムスターが脱走しないようにしなくちゃと思った。
 ハムスターは小さくて素早くて柔らかくて、きっと逃げ出したら私は捕まえることができない。
 だから逃げ出さないようにしなくちゃと思った。

 私はハムスターが逃げ出さないために二つのことを守っている。
 一つはケージに気をつけること。もう一つは戸締りを気をつけること。

ハムスターのケージ

 私は最初、ハムスターのケージは自分で作ろうと思った。
 インターネットの動画にあるみたいに、衣装ケースを改造して大きいハムスターの家を作ろうと思った。
 けれどそれはお父さんがダメだと言った。私では上手に改造できないかもしれない。お父さんもお母さんも衣装ケースをハムスターのケージに改造したことがないから、上手にできるかわからない。それが理由だった。もしも隙間ができたりしたら、ハムスターが逃げ出してしまう。ハムスターを飼うのなら、専用の物を買っていいよとお父さんは言ってくれた。
 ケージ作りをやりたい気持ちもあったけれど、私は納得した。確かにハムスターが逃げ出したら困ってしまう。それに一度逃げ出したケージにハムスターを戻すこともちょっと心配だ。

 私はお父さんとお母さんと一緒にハムスターのケージを見に行く。
 私が最初に選んだのは二階建てのケージだった。かわいいし、階段を上るハムスターを見てみたい。
 けれどお母さんがそれはダメだと言った(私の選択はよくお父さんやお母さんにダメと言われる)。
 お母さんも小さい頃ハムスターを飼っていた。そしてお母さんが使っていたケージもこういう二階建ての、金網で作られたケージだった。
 お母さんが子供の頃飼っていたハムスターはそのケージで怪我をした。ハムスターはケージが金網だとそこに手足をかけて登ってしまうらしい。天井まで登ったハムスターは上手に降りることもあるけれど、手足を滑らせて天井から床に落ちてしまうこともある。
 それに金網のケージはハムスターが登ることができるから、場合によってはハムスターが逃げ出しやすくなってしまう。
 そういう話を聞いて、私はまた納得した(私はお父さんやお母さんによく説得される)。確かにせっかく飼ったハムスターが怪我をするのは嫌だ。

ケージの戸締りに気をつける

 ハムスターを飼い始めてから、私はハムスターが脱走しないために戸締りに気をつけている。
 ケージは結局プラスチック製の透明な物にした。金網じゃないからハムスターがよじ登ることはたぶんない。けれど扉が正面に付いている。お世話はしやすいけれど、扉が開いていればきっとハムスターは逃げ出してしまう。
 だから私はハムスターが脱走しないように戸締りにすごく気をつけるようにした。扉を閉めて、しっかりロックをする。
 はじめは寝る前にお母さんにも戸締りができているか見てほしいと言った。私とお母さんで二回戸締りを確認すれば、どちらかがうっかり忘れても大丈夫だから。けれどお母さんは、それができるときもあるかもしれないけれどできないときもあると言った。ハムスターを飼いたいと言ったのはあなたなんだから、まずは自分で忘れないように気をつけてみてと言われた。仕方がなく私は一人で戸締りをきちんとできるように気をつけた。

ハムスターと私

 今のところ、私はハムスターが脱走したところを見たことがない。
 戸締りをきちんとしているからだろう。
 ハムスターはいつも呑気にペレットを食べている。その様子はたまらなく可愛い。
 そんな様子を見ていると、私はハムスターを狭いケージに閉じ込めている悪い奴なのではないかと思ってしまうときがある。本当はハムスターは外にも行ってみたくて、本当にハムスターのことが好きならそうさせてあげるべきなのではないか。そんなことを思ってしまう。
 けれどもちろん、私自身がハムスターの脱走を手伝うわけにはいけない。そんなことをすれば私はお父さんとお母さんに怒られ、私はもうペットを飼うことができなくなるかもしれない。
 お互い大変だねと、私は心の中でハムスターと会話をする。

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