どうやらサラリーマンは大変なようだ
残業をする無能
「定時に仕事が終わらないのは無能だ。仕事は時間をかければいいってものじゃないし、残業することは努力とイコールではない」
鈴木課長はそう言った。定時に仕事が終わらず残業が多い僕には耳が痛い言葉だ。
僕としても残業はしたくない。定時に帰りたい。ここだけの話、うちの会社はサービス残業が黙認されていて、時間外労働をしたって残業代が出るわけじゃない。
「どうやったら鈴木課長みたいに定時に帰れますか?」僕は聞いた。
「簡単なことだ。始業時間より二時間早く来て仕事をすればいい」鈴木課長は言った。
うちの会社はどうやら仕事が多いようだ。
給料を上げる方法
「どうやったら給料って上がりますかね」
僕は昼休みの雑談で田中先輩に聞いた。田中先輩は仕事ができる僕の憧れの先輩だ。
「まずは社会人として使える人材になることなんじゃないかな。敬語が使えるとか、身だしなみがきちんとしてるとか、人とコミュニケーションを円滑に取れるとか」田中先輩は言った。
「なるほど」僕は頷く。
「そのあとに技術的なことだろうね。今やっている仕事の専門性を高めるとか、役立つ資格を取るとか。まぁ、資格を取らなくても、少なくともITの知識はあって損はないんじゃないかな」
「なるほど」僕は頷く。
「それで転職する」田中先輩は言った。
「なるほど」僕は頷く。どうやら給料は上がらないようだ。
ほうれんそう(報告・連絡・相談)
仕事において「ほうれんそう」は大切だ。「ほうれんそう」とは「報告」「連絡」「相談」の三つを合わせた俗語だ。
うちの会社はほうれんそうができていない。個々が個々の判断で動きすぎるきらいがある。社員に自主性があり会社に自由があることはいいことだが、組織として統率が取れていないこともまた事実だ。
山田部長は対策として、ほうれんそうの強化月間を打ち出した。社員にそれぞれの業務の経過報告を義務付けた。また各業務ごとの連絡係を作った。悩みの相談は課長が窓口として対応するようになった。
これらが先週の会議で決まったこと。私は会議の日、子供が風邪をひいて看病のため仕事を休んでいた。そして今の今までこの決定事項を知らされていなかった。どうやら上司もほうれんそうができていないようだ。