ペペロンチーノの作り方
美味しいペペロンチーノが食べたくなった
ペペロンチーノが食べたい。
金曜日の午後、唐突に私はそう思った。
唐突に、ガーリックが強めのペペロンチーノを食べたいと思った。
そして明日は休日で、今日食べるニンニク料理は明日のにおいを気にしなくていい。
一度思考が頭をよぎればそれは私の頭の中に居座り、気づくとそれを実行するための手はずを考えてしまう。それはさして私を悩ますこともなく、私のこれからの予定を組み上げてくれる。
何かを唐突にしたいと思ったとき、人の頭の中はまるで正しい位置がわかっているパズルを組むようにすんなりと時間配分を見出してくれる。
ペペロンチーノの材料とベーコン
仕事が終わった夕方、私は定時で退社し車に乗り込む。そして通勤ルート沿いの大型ドラッグストアに立ち寄る。郊外に住み働くことは華やかではないかもしれないが、私には合っていると思う。ごみごみしていないし、少し足を伸ばせば生活に必要な物が簡単に手に入る。運転がさして好きじゃない私にとって通勤手段が車になることは幾分不満だが、気軽に買い物ができるのはいい。大型ドラッグストアは物が安いし消耗品から食料品までいろいろな物が手に入る。本来は薬を買う所であるからドラッグストアなのだろうが、私はこれまでの人生で一度も処方箋の必要な薬をドラッグストアで買ったことがない。
私はドラッグストアに入りカゴとカートを持って店内を回る。とはいっても今日買う物はそれほど多くない。家にニンニクとパスタはある。私はベーコンと炭酸水をカゴに入れる。どちらもなくてもペペロンチーノは作れる。けれど今日はニンニクでベーコンをしっかり焼きたい。具材が少ないペペロンチーノはプラスアルファの具材が楽しめる。そして炭酸水。オリーブオイルをパスタに絡めるペペロンチーノには、口の中をさっぱりとさせてくれる飲み物も欲しい。本当はペリエを買って雰囲気も出したいところだけれど、あいにく私が通うドラッグストアにペリエは置いていない。日本ブランドの炭酸水をいつも買っている。
ペペロンチーノのレシピ
家に着いて着替えを済ませ、私はケトルでお湯を沸かす。パスタを茹でるために。最初から鍋でお湯を沸かすより、こっちのほうがきっと早い。私はケトルで数回お湯を沸かし、大きめの鍋にそれを入れながら火にかける。もう一方のコンロにフライパンを置く
一人暮らしの自炊はなかなか効率が悪い。一人分の食事は食材が中途半端に余りがちだし、洗い物の量も割に合わない。だから私はできるだけ鍋一つ、フライパン一つで作ることができる料理を選ぶ。けれど、パスタは例外の一つ。パスタは茹でる鍋とソースを作るフライパンの二つを使う。もちろんフライパン一つで茹でることとソースを作ることの両方をできなくはない。けれどその方法だと(私は手際が悪いから)パスタの茹で加減がなんともうまくいかない。だから私は、鍋とフライパンの両方を使う。茹でるためだけに使った鍋は、さっと洗えばいいことがせめてもの救いかと思う。
鍋のお湯が沸騰したら塩を一つまみ入れ、パスタを茹でる。
私はパスタの茹で時間は規定よりも短めにしている。
私は手際が悪いので、余熱で思ったよりも柔らかくなってしまうから。
パスタを茹でながら私はニンニクの皮をむき、包丁でスライスする。細かく刻んで使うこともあるが、今日はスライスした大きめのニンニクにしたい。
そして買ってきたベーコンも切る。フライパンにはオリーブオイルを入れ、火にかけ始める。
時間になってパスタを一旦穴の開いたボールに入れてお湯を切る。
熱されたフライパンのオリーブオイルの中に、唐辛子の輪切りとスライスしたニンニクを入れ、炒める。
私は唐辛子の輪切りのことを鷹の爪という名称で呼ぶことが嫌いだ。幼い頃、私は本当に鷹の爪を鷹の爪のことだと思っていた。紛らわしい名前は、あまり好きじゃない。
ある程度火が通ったらそこにベーコンを入れる。ニンニクの香りがするオリーブオイルの中でジュッと音を立てながら焼けるベーコンがたまらない。これでおおむねペペロンチーノのソースは出来上がってきた。最後にごくわずかに、私は顆粒コンソメを入れて素早く混ぜる。
ソースが出来上がり、私はパスタをフライパンに投入しオリーブオイルと絡めていく。これでペペロンチーノが出来上がり。
皿に盛り付け、最後にパセリを一振りする。
ペペロンチーノにパセリの一振りが必要かはわからない。単に雰囲気であり私の自己満足。
以前ドラッグストアで買ったパセリの小瓶は、料理の自己満足を高めてくれる。
ガラスのコップに氷と炭酸水を入れてテーブルへ。ペペロンチーノが入った平皿とフォークを並べれば、大して手間のかかっていない料理も随分と映える。
私は小声でいただきますと、誰に言うわけでも一人暮らしだから誰が聞いているわけでもない言葉を口にした後、ペペロンチーノを食べる。
ニンニクをしっかり咀嚼しても、明日は休みだから気にならない。唐辛子の輪切りで若干の辛さがあるパスタ。オリーブオイルと絡まっていて、食べていると私の唇はちょっとつやつやになる。
だからこそ炭酸水がおいしい。コップの口を付けた部分に、油で私の唇の跡が少し付く。決して衛生的とは言えず、きっと外食だったら気にしてしまうな、というか恥ずかしいだろうなと思う。