サンタクロースの正体の伝え方
子供にサンタクロースの正体を聞かれたとき、親の答え方は大きく三つあるだろう。
一つ目は正直に打ち明けることだ。
サンタクロースの正体を親が子供に正直に話す。
クリスマスにサンタクロースという第三者は家に来ていないこと。
クリスマスプレゼントを用意し、枕元に置いていたのは父親あるいは母親であること。
これらを正直に話す。
サンタクロースの正体を打ち明ける際、一番大事なのは愛情も一緒に伝えることだろう。
サンタクロースの正体を知れば、確かに子供はショックを受けるかもしれない。
しかしそれが、「優しい嘘」であると子供が思えることは重要だ。
子供に喜んでほしかった、夢を持ってほしかったという親から子への愛情がきちんと言及されれば、子供が大人になる頃には、その大人の愛情が理解できるかもしれない。
二つ目は、正体を打ち明けずサンタクロースというファンタジーを貫き通すやり方だ。
サンタクロースはその存在を信じている子供のところにしか来ない。
だから信じることをやめたり、大人になるとサンタクロースから「卒業」ということになる。
来年からはお父さんとお母さんが代わりにプレゼントを用意するね。
このようにしてサンタクロースというイベントからフェードアウトしていく。
夢は夢のままにしておくやり方と言えるだろう。
三つ目は、サンタクロースという存在を現実世界に溶け込ませる言い方だ。
例えば枕元にクリスマスプレゼントを置くところを見られたとき、「サンタクロースがプレゼントを準備してくれて、枕元に置いているのはお父さんとお母さんなんだ」といった言い方。
ネットショッピングでプレゼントを買う際に、「サンタさんに注文しておくね」という言い方。
サンタクロースというのはおとぎ話の不思議な人物ではなく、クリスマスにプレゼントを準備・配送する慈善団体であるというありそうな設定を語る方法だ。
これは子供がある程度大きくなっても説明がしやすい。(実際にサンタクロースの団体は海外に存在する)
いずれにせよ、子供にサンタの正体を聞かれたとき、親はなんらかの答えを求められる。
そしてそれは、いざ自分の身に降りかかったとき、思ったよりも悩ましく、何と答えたらいいか考えさせられるものだ。
「昨日の夜、『サンタさんってほんとにいるの?』って聞かれたの」
まだ息子が寝ている早朝、妻はそう言った。
「あなた昨日仕事で遅かったでしょ? だからつい『明日パパに聞いてみようね』って言ってしまって……」
「そうかぁ。ついにそういうことが気になる年齢になってきたか」
「どうも学校で、友達が『サンタクロースの正体はお父さんなんだ』って言う子がいるらしくて」
そういう冷めたことを言う子供はどこの学校にもいるんだなと改めて思う。
「ねぇ、どんなふうに答えたらいいと思う?」妻は言う。
「そうだなぁ、正直、俺も悩んでしまうよ。ごめん、もう仕事の時間だから、また夜に話そう。いずれにせよ夫婦で答え方が違うのは良くないだろうし。俺も今日一日、何か良い返し方はないか考えるよ」
「そうね。ごめんなさいね。出掛ける直前に。私も考えてみる」
「いってきます」
「いってらっしゃい」
さて、どうしたものか。息子への答え方を考えながら、そりに乗ってトナカイを走らせる。ただでさえ忙しい十二月。サンタの正体はお父さんでしたと、言うべきか言わないべきか。悩みつつもプレゼントを配りに出発する。