ハムスターが亡くなったら

オムニバス(エッセイ風小説)

ハムスターが亡くなったら

ハムスターが亡くなったら

 ペットのハムスターが亡くなった場合、現代ではペット葬儀業者にて対応するのが一般的だ。

 生き物を公園や山など私有地以外の場所に埋めるのは違法で、自力でハムスターを供養することは(余程手慣れた人でない限り)意外と難しい。

 一昔前なら、気づかれないようにこっそりと森に埋めるということもあったかもしれない。しかし今の時代では、いろいろな社会的側面で難しいだろう。

ペット葬儀業やを利用する理由

 ペットを供養するというのは、初めてだと意外と知らないことが多い。

 ハムスターのような小動物なら、庭に埋めるというのも1つの選択肢だ。
 庭がない家、マンションならば、少し大きめの鉢植えを使うという手もある。
 ハムスターを土葬し、一緒に花の種を植える。
 土に還ったハムスターと、その上に咲く花を見れば、少しは悲しみも癒されるかもしれない。

 けれど庭や鉢に小動物を埋めるのは、なかなか難易度が高い作業でもある。
 まず、中途半端な深さで埋めれば、野良猫や鳥に掘り返されるかもしれない。
 そして動物が土に還るのは、とてもとても時間がかかる。

 猫や鳥に掘り返されたり、雨風で土が削られたりして、もしも土に還る途中のハムスターを目にしたら、例えば私は耐えられないかもしれない。

 結局のところ、少なくとも私はプロとしてハムスターを飼育していたわけではない。
 私はハムスターを家族として受け入れ、世話をし、一緒に過ごしただけだった。

 人は誰かの命と一緒にいることにどれだけ慣れたとしても、その命の死に手慣れるわけではないのだ。
 生には生の、死には死の、慣れる時間が必要だ。

ハムスターが亡くなったときにすること

 私が亡くなったハムスターにしてやれることは多くなかった。

 私がしてやれることは、ハムスターを使い捨ての保冷材と一緒にタオルでくるみ、ペット葬儀業者へ電話をすることだった。そしてペット葬儀場へ運んであげることだった。

 業者にもよるが、亡くなったペットを家までお迎えに来てくれる場合がある。
 その場合はペットを預け、それでおしまい。人間のような厳かな儀式はない。

 一方で、自身で葬儀場までペットを運ぶパターンもある。
 この場合、火葬や納骨に同行するかは選ぶことができる。
 私はハムスターを葬儀場まで自ら運ぶことを選んだ。

 私は使い古したフェイスタオルをハンドタオルほどのサイズに切った。保冷剤と一緒にハムスターをタオルでくるむ。手頃な空き箱がなかったので、中身が残り少なくなっていたティッシュの箱を使った。ハムスターが入るくらいの大きさで上部を切り取り、残っていたティッシュを取り出す。そしてタオルでくるまれたハムスターを入れる。

 顔が見えるようにタオルのくるみ方を変えると、ただハムスターは布団で昼寝をしているようにも見えた。
 ハムスターは穏やかな表情をしていた。
 この穏やかな表情はたまたまなのか、ハムスターはみんなこんな表情で亡くなるものなのか、私にはわからない。
 いずれにせよ、この子の最期が穏やかな表情であることは、私にとっていくらかの救いだった。

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