【1分ショートショート】人の悪口は言わないほうがいい

オムニバス(ショートショート)

人の悪口は言わないほうがいい

人の悪口は言わないほうがいい

 人の悪口は言わないほうがいい。理由は二つある。
 一つは人の悪口を言う人は嫌われる。悪口を言われた人はいい気持ちがしないし、悪口を聞けばたとえそれが自分に対する悪口でなくてもいい気持ちはしない。悪口は人を遠ざけてしまうのだ。
 二つ目は、人の悪口は自分の心もむしばんでしまう。悪口はネガティブな言葉だ。たとえそれが他者に向けられたものであっても、ネガティブで陰湿なそれらの言葉は自分の心を消耗してしまう。悪口を言う人が総じてネガティブで悲観的なのはそのためだろう。
 悪口を言う人は自分自身もネガティブになっていっていることに気づいていない。人の悪いところや短所にばかり目がいき、人の良いところを見ようとしない。口から出る言葉はネガティブなことばかりで、周囲を暗い気持ちにして、その陰湿さに同調しない人の悪口をまた言い始める。それは愚かで、くだらないことなのだ。そして私は今、悪口を言う人の悪口を言っている。


歳をとったら謙虚になったほうがいい

 僕達が考えた業務の効率化案は、最後の最後で白紙に戻った。
 インターネットを活用した僕達の案は、当初から上の人達には受けが悪いだろうと予想はついていた。それでも僕達若手は、少しでも会社を良くしようと取り組んでいたのだけれど。
「うちの会社の風通しが悪いのは、山口専務のせいだよ。七十歳の年寄りに今の時代や現場のことはわからない。いつも古い価値観と感情論で物事を決めるんだ」
 六十代の山田部長はそう言いながらビールを飲んだ。二次会もずいぶん時間が経っている。上司の愚痴を聞くのはこれくらいにして、そろそろみんな内心帰りたがっている。


人の気持ちには共感してあげたほうがいい

 人の話を聞くとき、人の気持ちには共感してあげたほうがいい。
 会話はただの情報交換ではなく、コミュニケーションだからだ。
 人は自分の気持ちに共感してもらえると、嬉しいものだ。
 しかし難しいのは、自分が共感したくない会話を振られたときだ。例えば自分の意見と違う話題や、自分が関わりたくない愚痴や悪口。
 こういうものには正直あまり共感したくない。しかし相手のことをもう少し違った視点で見ると、また別の考えも出てくる。相手は愚痴や悪口を通して、自分のことを理解してほしいのかもしれない。「○○さんが嫌い」は、「○○さんで苦労している自分」を理解してほしいかもしれないのだ。
 そのように考えると、相手が話す愚痴の聞き方もまた違ってくると思う。
「新人の高田さんってどう思う?」
 陰でみんなから「お局」と評される島田先輩が言った。
「高田さんの指導で、苦労されてるんですか?」私は言った。
「そうなの。高田さんって愛想はいいし仕事はできるんだけど、やっぱり『今時の子』って感じで気配りができてないのよ」
「気配りができてないんですね」
「そうなの。まだ若いからねぇ」
「高田さん、若いですもんね」
「私ももう歳だから、若い子のことはよくわからないわ」
「島田さん、もう歳ですし若い子のことわからないですもんね」

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