子持ち様の不平不満と問題点

オムニバス(エッセイ風小説)

子持ち様とは

 子持ち様。
 要するに、(仕事を急に休んだりする)子育て世代のしわ寄せを受ける人達の悲痛の言葉。

 「様」を付けているのにスラング(卑語)なのだから、日本語って難しい。
 子持ち様という言葉は、「はいはい子育てで今日も休むのね。偉い偉い」という皮肉だ。

 子持ち様に共感する人もいれば、非難する人もいる。

 これはきっと、二つの問題がごっちゃになっているからだ。
 社会の問題と、個人の問題だ。

 社会の問題。
 つまり、子育て世代のしわ寄せを現場が過度に受けるような、社会の仕組み・会社の経営方針が悪いということだ。

 子育てをしながらでも働きやすい国・会社にしましょう。
 そんな理想論を掲げながら、実際のシステムが伴っていない。
 綺麗事と現実の間で割を食うのは、いつだって現場の人間だ。

 個人の問題。
 つまり、子持ち様が嫌いな人は、別に子育て世代全体を非難しているわけじゃない。
 子育てを盾に自分の権利ばかり主張し義務を果たさない、浅はかな人間が嫌いなのだ。

「子持ち様は嫌い。でもそれは子育て世代全体が嫌いなんじゃなくて、『お前みたいな奴』が嫌いなんだ」ということだ。

 フルタイムで勤務できないことは明白なのに、フルタイムで契約して給与を少しでも高くしようとする人。

 子供のことを理由に休んでおいて、実はこっそり遊び歩いている人。

 独身の人達を軽んじて、自分ばかりが忙しいと悲劇の主人公になっている人。

 当日の朝になって急に「休みます」。それ以降の状況報告はまったくしないで「来れたら来ます」を何日も続ける人。

 そういう人達に対して、現場の人間は心の中で思っている。
「子持ち様、さぞお忙しいことと存じますが、少々やり方に工夫の余地があるのではないでしょうか」
 心の中で思うだけで、実際は誰も言わない。言い方をどのようにしたって、ハラスメントになってしまうから。
 そういう世の中だから。

 「あなた」に言ったことが「子育て世代全体」に言ったことになってしまう。
 「あなた」への指摘が「子供」への非難に取られてしまう。
 「私」の大変さが「私の方がもっと大変」にされてしまう。

 そういう世の中だから、社会や会社のルールを変えていかないといけない。
 現場の人間同士で攻撃し合わず、社会や会社を変えていかないといけない。

 ただし、「あなた様」はあなた様で改善できるところは改善していただくようお願い申し上げます。



 

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