最後の晩餐
もしも明日世界が滅ぶとしたら、今日の夕飯は何を食べる?
そういう質問ってよくあるよね。最後の晩餐ってやつ。子供っぽいもしも話。
でも難しい問題よね。
でね、いろんな人がいろんな食べ物を思い浮かべると思うんだけれど、最後の晩餐でみんなが言う食事って、三つのタイプがあると思うの。
一つは贅沢を優先するタイプ。
できるだけ高級なお寿司を食べたいとか、フランス料理のフルコースとかってやつね。
二つ目は関係性を優先するタイプ。
恋人の手料理が食べたいとか、家族と食卓を囲みたいとか。
要するに何を食べたいってよりは、誰とどんな風に食べたいかを優先するタイプ。
三つ目は、日常を大切にするタイプ。
普段行っているラーメン屋さんに行きたいとか、家で卵かけご飯を食べたいとか。
自分が普段何気なく食べている物が結局一番口に合うよねって考えるタイプ。
最後の晩餐に何を食べるかって難しい問題だけれど、結局は人生において何に重きを置いているかということだと思うの。
つまり、食べ物を考えるより先に、自分が三つのどのタイプかってのを選んだほうがおのずと答えが出ると思うの。
でね、私はやっぱり二番目のタイプだと思うの。
大切な人との食事は何にも代えがたいと思うの。
もちろん、今私達はこうしていい物を食べているけど、それは本質じゃないと思うの。
私はあなたと食べるからこの食事も意味があると思ってるの。
私はあなたにとって今でも大切な人だよ。
「でもこれは『最後の晩餐』ってことなんだね?」男性は言った。
「うん。ごめんね。でもあなたの何かがダメってことじゃないんだよ」女性は言った。
こうして男性は女性に振られた。
円満に男女の仲を終えることは難しい。だから人は時々嘘をつく。
今でも本当は好きだよというのは、だいたいにおいて社交辞令だ。
多くの場合、(特に若い頃の)男女の恋愛が終わる理由は、気持ちがなくなったということだ。それ以上でもそれ以下でもなく。