マクガフィンとマフィン
マクガフィンとは創作物におけるプロット・デバイスの一つだ。小麦粉を使った焼き菓子であるマフィンのことではない。
プロットとは筋書きといった意味であり、デバイスとは装置といった意味だ。
要するにマクガフィンとは物語を作る上でのテクニック・技法の一つである。
マクガフィンとは物語において重要であるが代替可能でもあるものを指す。
例えば怪盗の物語において主人公である怪盗が、ある国の国宝であるダイヤモンドを狙っていたとする。そして道中で一人の女性と出会い、怪盗はその女性と恋に落ちる物語があったとしよう。
この物語において国宝のダイヤは非常に重要な要素である。なぜなら怪盗と女性が出会うきっかけになったからだ。
一方で、この物語が怪盗と女性の恋愛を描くことが主であり以降ダイヤモンドにさして触れない場合、このダイヤモンドはダイヤモンドでなくてもいい。エメラルドでもいいしサファイヤでもいいし宝の地図でもいいし有名な絵画でもいい。要するに代替可能であるわけだ。この物語においてダイヤモンドはマクガフィンであると言える。
例のダイヤモンドのように、マクガフィンは物語において便宜的なきっかけ・動機付けにとどまることが多い。このため物語が進むにつれ、その重要性は低下しスポットライトから外れることが多い。
しかしマクガフィンは物語の展開を作る上で非常に重要、というか便利である。
例えばライバルが「俺が戦うのは賞金が目当てでお前を助けるためじゃない」と口で言いながらも主人公の身を案じ共闘するのはなかなか胸が熱い展開である。この際の賞金はマクガフィンと言えよう。
このようにマクガフィンは登場人物の信念や性格の設定を損ねることなく、登場人物を特定の展開に持っていくことができる。マクガフィンは、創作物においてなくてはならないものの1つかもしれない。
冒頭で書いたマフィンはこの物語におけるマクガフィンと言える。
マクガフィンに似た単語を引き合いに出してマクガフィンを説明しているだけなので、別に語感が似ていればマフィンでなくもいい。マクガイバー(アメリカのテレビドラマ)でもいいしマカフィー(セキュリティ関連の会社)でもいい。
つまりマクガフィンはマフィンのことではないが、マフィンはマクガフィンである。