マキネッタのすすめ|家庭のエスプレッソコーヒー

オムニバス(エッセイ風小説)

マキネッタのすすめ

マキネッタとは

 コーヒーが好きな人にとって、マキネッタは愛着を持てる器具の一つだと思う。

 火にかけると圧力がかかる、コーヒー用のやかん、あるいは急須とも言えるマキネッタ。

 直火式エスプレッソと言われるように、マキネッタは通常のドリップコーヒーよりも濃いコーヒーを淹れることができる。
 エスプレッソマシンと比べればその圧力は劣りクレマ(濃いコーヒーを淹れたときに生じる泡)は少ないが、マキネッタの魅力はそのシンプルさだ。シンプルな構造は壊れにくく場所を取らず、安価で手軽に濃厚なコーヒーを淹れることができる。

マキネッタの使い方

 マキネッタの使い方は、下部のパーツに水を入れて上部のパーツにコーヒー粉を入れて火にかける。

 それだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。
 水蒸気で圧力がかかり、充分にコーヒーが抽出されたらポコポコと音が鳴る。音が鳴りやむ頃に蓋を開ければ、濃いコーヒーが抽出されていることがわかるだろう。それをカップに注げばいい。
 これらはおそらく一人分なら五分もかからない。

 余談にはなるが、「それ以上でもそれ以下でもない」というのは「足るを知る」ということだと思う。マキネッタは様々な意味で足るを知った器具だと思う。

 個人がコーヒーを楽しむ上で、そう多くのことは必要ない。
 少しの水とコーヒーの粉、火とマキネッタ。
 お気に入りのカップと、それらを楽しむささやかな時間。そういうものがあればいい。

マキネッタのおすすめ

 聞き慣れない人には聞き慣れないかもしれないが、マキネッタという物はその界隈ではありふれた道具の一つだ。
 だから探そうと思えば意外と手に入る場所は多い。

 試しにカルディでもなんでもコーヒーを扱うお店に行ってみるといい。マキネッタの一種類や二種類は置いてあるだろう。

 そんなありふれた道具であるマキネッタを、あえて分類するとするなら、それはアルミ製かステンレス製かということだろう。

 どちらも機能に大差はない。好みの問題だ。

 そして私はステンレスのマキネッタを好んでいる。
 ステンレス特有の金属の輝きがあり、アルミ特有の臭さがないのがその理由だ。
 また底面が大きなものであればIHクッキングヒーターが使える点も汎用性が高い。

 ステンレス製のマキネッタを好んでいるわけだが、その中でも私はイザベラというマキネッタを使っている。
 このマキネッタは底面が他のマキネッタより大きめであり、IHクッキングヒーターで使うことができる。(ただし底面が他の物より大きいとされるイザベラでさえ、直径がギリギリだ。IHの機種によっては、反応が悪いかもしれない)
 私はマキネッタをコンロでもIHでも使ったことがあるのだが、両方で使えるのはそれなりに安心感がある。

 寒い朝、私はキッチンでマキネッタを火にかける。同時にミルクを温め、音が鳴ったマキネッタからコーヒーをカップに注ぐ。濃厚なカフェラテは、私をほっとさせてくれる。それは私を調整させてくれる時間なのだと思う。日常のささやかな習慣に時間を割くこと。それは日々の多忙さとか、社会のくだらなさとか、人間関係の煩わしさとか、そういうもので疲れた自分を調整してくれる気がするのだ。

テキストのコピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました