外見と中身どちらが大切か

オムニバス(エッセイ風小説)

外見と内面どちらが大切か

 外見と内面はどちらが大切だろうか。
 あるいは、外見を重視して人を好きになるほうがいいのか、内面を重視して人を好きになるほうがいいのか。

 これは難しい。というか、結局は両方のバランスが大切であるという考えに行きつく。
 なぜなら、内面からにじみ出る外見というものがあるし、外見から反映される内面というものがあるからだ。

 例えば、非常に中身の優れた人がいるとする。しかし外見は散々だ。何日も風呂に入らず身体は不潔で、衣服にも気を遣わず人前に出れるような恰好をしていない。髪はぼさぼさ爪は不衛生に伸びている。そのような状況を周囲は度々注意するが、一向に改善の気配はない。内面は優れた人格者なのだが。
 さて、この人は本当に内面が優れた人なのだろうか。
 自分の外見が相手にどんな印象を与えるのか。人の忠告を聞くことの大切さを知っているのか。
 外見というものは少なからずその人の価値観・内面が出る。だとしたら外見をまったく見ずに人の内面を見ることはできるのだろうか。

 逆に、外見が内面に影響を与えることもある。
 例えば化粧はその例の一つだろう。化粧をすることで自信を持てたり心が踊れば、それは内面にも影響する。
 おそらく外見と内面は相互関係にある。どちらかが単独で形成できるわけではない。

 だから私達が他者を見るときは外見と内面のバランスを保つことが必要かもしれない。
 外見にだけとらわれるわけではなく、内面だけを見るという綺麗事でもなく、どちらもその人を表しているのだと認めること。
 それは自分に対する教訓にもなるかもしれない。
 「人は中身が大事なんだ」という信念は「外見なんてこだわらなくていい」という傲慢を時として生む。
 「人は見た目が大事なんだ」という信念は「中身はどうだっていい」という傲慢を時として生む。
 自分の外見にも中身にも責任を持てるということは、ある程度成熟してきた大人には必要なたしなみかもしれないのだ。

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