童話を題材にした一分ショートショート
金の斧と銀の斧と木こりの斧
「あなたが落としたのはこの金の斧ですか? それともこの銀の斧ですか?」
湖の中から現れた女神は言った。
「僕が落としたのは金の斧でも銀の斧でもありません。普通の斧です」
僕は答える。すると女神は湖の中から普通の斧を取り出した。それは間違いなく僕の斧だった。
「これがあなたの斧ですね。どうぞ。あなたは正直者ですね。心が綺麗なあなたには、この金の斧と銀の斧も差し上げましょう」女神はそう言って三本の斧を僕に渡す。
「ありがとうございます」僕はそう言って斧を受け取った。「助かりました。この斧はレンタル品で、失くすとあとが面倒だったので」
さるかに合戦未満
ある日、猿とカニが柿の種とおにぎりを交換した。
おにぎりは食べるとなくなってしまうが、柿の種は育てて柿を作ればずっと食べることができる。猿にそう説得されたからだ。
カニは地道に柿の種に水をやり、立派な柿の木にした。そこへやってきた猿は、木に登れないカニの代わりに柿を取ると言った。ところが猿は一向に木から降りようとしない。
「早く降りて来てくれよ」カニは言った。
「嫌なこった。俺だけで食べてしまうよ」猿はそう言った。
猿はいじわるく笑いながら、カニが一生懸命育てた柿を食べる。しかしすぐに猿は顔をしかめた。
「それは渋柿だからそのまま食べられるわけないだろ」
カニはそう言った。カニは干し柿ができあがったら猿にもおすそ分けするつもりだったが、どうやらその機会はなくなりそうだ。
舌切り雀のつづら
舌を切られた雀をおじいさんはたいそう心配した。
舌を切られた雀は、自分を探しにこんな山奥まで来てくれたおじいさんに改めて感謝した。
雀たちはおじいさんをもてなし、帰りに二つのつづらをおじいさんに見せた。
大きいほうと小さいほう。おじいさんは小さいほうをもらって帰っていった。
おじいさんが帰った後で雀達は言った。あえて小さいほうを持って帰って、おじいさんは優しい上に欲もない清らかな人だと。
家に帰ったおじいさんは、強欲なおばあさんに怒られた。
「なんでわざわざ小さいほうを持って帰ってきたんだ。どうせなら大きいほうをもらえばよかっただろう。ほんとあんたは抜けてるね」
するとおじいさんは言った。
「いやいや、もしいらない物だったらかさばる物は大変だろう。メルカリに出すなら送料が安く済む物が売りやすい」