レッドヘリングとは?
レッドへリングとは要するに論点をずらすことである。
話の中心となっていることとは別の話題を挙げ、議論がそちらに逸れることで本筋が置き去りになってしまう。この論点をずらすための話題、あるいはそういった手法をレッドへリングと言う。
レッドへリングは「燻製ニシンの虚偽」とも言われる。
つまり匂いの強い魚によって他の匂いへの注意が逸れてしまうことから例えたものだ。
レッドへリングは「論点ずらし」「屁理屈」といったネガティブな意味合いで扱われることが多いが、同時に興味深いものでもある。
なぜならレッドへリングは話題が逸れるほど聞き手の興味をそそり、なおかつ筋が通っているように見えないといけないからだ。
そのような表現を行うにはある程度の知識や機転、ユーモアが必要であるだろう。
だからこそレッドへリングを「ただの屁理屈だ」と一蹴するのはいささかもったいない気がする。
以上を踏まえレッドへリングの例を挙げていきたい。
青山と赤井は同じ会社の同僚である。
青山は赤井の書類にミスがあったことを指摘している。
青山は非常に几帳面な性格であり、対して赤井は非常に大雑把だ。どちらも仕事に前向きではあるが、どうも意見が食い違うことがある。
「赤井、また書類に誤字があるぞ。早く修正しておかないと部長に怒られるぞ」
「ああ、そのうちやっとくよ」
「『そのうち』ってお前また忘れるだろ。こういうのは気づいたらすぐやらないとダメなんだよ」
「なあ青山、俺は仕事には優先順位があって、それは先行投資性があるかどうかが関係すると思うんだ」
「なんの話だ?」
「要するにな、この書類は形だけの雑務で、しかも締め切りは来週だろ? ってことはこの書類の書き直しは大して重要な仕事じゃないんだよ。俺達は別件で来週の企画会議に向けたプレゼン資料を作っている。この企画が通るかは重要だ。つまり先行投資性が高い。お前だって企画を通したいだろ? だったら雑務は少々後回しにしてでも今は資料作りに全力を尽くしたほうがいいと思うんだよ。青山は昨日だって目の前の雑務に追われて資料作りがあんまり進まなかったじゃないか」
「今は俺の仕事の進め方の話じゃなくて、お前の誤字の話だろ」
「なあ青山、考えてみくれよ。レッドヘリングの『ヘ』が片仮名じゃなくて平仮名だったからって、誰が困るんだよ。みんなどうせ気づかずにスルーするって」