意味が分かると怖い話
保育園への言葉
「お母さんもお父さんも優しいよ。いつも『愛してる』って言ってくれるもん」
保育園でユウキちゃんはそう言った。そうは言っているけれど、ユウキちゃんの腕には痣がある。それに、まともに食事を摂れているのか怪しい。やせ細って、栄養が足りない感じだ。
虐待を受けていても、子供は親のことが好き。そんな話を聞いたことがある。虐待を受けている子はそれが「当たり前」になってしまって、親のことを客観的に見ることができない。ユウキちゃんも、自分が虐待をされていると気づいていないのだ。
けれどこれは、明らかに虐待ではないか。私はそう思った。家庭のことに口を出しにくい時代だが、この状態を放っておくわけにはいかない。
「先生、もっと遊ぼうよ」
今日も私にべったりくっついて、保育園から帰りたがらないユウキちゃん。
未来への投資
この国が衰退したのはお前ら老人のせいじゃないか。
若者達は言った。
今の若者は今の老人のような額の年金はもらえない。
今この国を支えているのは若者なのに、働きもしない(あるいは働いていても老害として足を引っ張る)老人達ばかりが権力を持っている。
世代交代のときだ。若者は言った。
若い世代にお金と権限を与えるべきだ。若者は言った。
努力の甲斐があって、時間はかかったが、この国は変わった。
政治の仕組み・社会の在り方が変わった。
そしてこの国を変えようとしたかつての若者達は、今ではお金も権力もない老人となった。
幽霊への恐怖
幽霊を見た。部活の帰り道、薄暗い歩道で私は幽霊を見た。
霊感が強いのか、私は幼い頃からみんなが見えないものが見えた。
けれどこんなにはっきり、幽霊を見たのは初めてだった。だから怖かった。
幽霊は別に何もせず歩道の端に居る。
次の日も、その次の日も、幽霊は歩道の端に居る。
私は幽霊が居るその歩道をいつしか走って通るようになった。幽霊をできるだけ見たくなかったから。今日も歩道にいる蛇の幽霊。私は蛇が大の苦手なのだ。