1分でSFショートショート
タイムマシンで行くところ
タイムマシンに乗った。
僕は未来に行ってみた。未来の僕はどうしているか見てみたかったから。けれど僕はいなかった。たぶん僕は死んでしまったんだと思う。とても悲しい気持ちになった。僕は未来に行くのはやめようと思った。
タイムマシンに乗った。
僕は過去に行ってみた。過去の僕にアドバイスをしてみたかったから。けれど僕はいなかった。周りの人間に聞いたら、そんな人知らないなぁと言われた。僕は存在しないことになっているらしい。とても悲しい気持ちになった。僕は過去に行くのはやめようと思った。
タイムマシンンに乗った。
僕は自分の時代に戻ってきた。僕は今を生きようと思った。
妻のクローン
僕の妻は交通事故で死んだ。それは大型トラックが起こした事故で、彼女の身体は原型がわからないくらいボロボロだったらしい。幸い彼女のDNAと記憶はクラウド上にバックアップされていた。今の身体を修復するより、幹細胞を培養してはじめから身体を作ったほうが確実であるとのことだった。
こうして僕は妻と再会する。全く同じ見た目、同じ声、同じ記憶。けれどオンラインのバックアップが間に合わず、事故の瞬間の記憶はないようだ。この人は妻なのだろうか。それともクローンなのだろうか。
僕は妻に打ち明ける。実は君は一度死んでいて、その体はバックアップを基に一から作られたものなんだ。今の君には事故の瞬間の記憶がないから、実感がわかないかもしれないけれど。僕が言葉を選びながら慎重に話していると、妻は、あなたもそうよと言った。
ロボットがやってくれる
「朝食はなんになさいましょう」ロボットは言った。
「トーストとコーヒーを頼むよ」僕は言った。
「今日は何時にお帰りになられますか」ロボットは言った。
「八時くらいになると思うよ」僕は言った。
「ではそれくらいに夕食を準備しておきますね」ロボットは言った。
「ありがとう」僕は言った。
一人暮らしでも、今の時代はロボットがなんでもやってくれる。便利な時代だ。
「行ってくるよ」身支度を済ませて僕は言った。
「いってらっしゃいませ」ロボットは言った。
僕は会社で仕事をする。家のことはロボットがやってくれるから、僕は仕事に集中できる。
「調整終わりましたよ」僕は言った。
「ありがとう」お客さんのロボットは言った。
「いってらっしゃいませ」僕は言った。