【ショートショート】祖母にスマホの使い方を教える

オムニバス(ショートショート)

祖母にスマホの使い方を教える

 今の時代、年齢に関わらずスマホは便利で必要な道具だと思う。
 通話だけでなく、ちょっとした調べ物にもスマホは役立つ。
 情報格差があると言われる昨今、僕はアナログな私生活の祖母を心配していた。
 祖母は一人暮らしなので、連絡手段が家の固定電話だけである点も何かと心配だった。

 そんな僕の働きかけもあって、祖母は今回スマホを持つことなった。
 僕が帰省したときと重なったこともあって、僕は祖母にスマホの使い方を教えることになった。
 「メールってのは難しそうだね」祖母は言った。
 「ばあちゃん、今はもうメールじゃなくて、ラインを使う人が多いから、ラインをまず覚えようよ」
 「ラインってなんだい?」
 そんなところから始まった僕と祖母のスマホ講座は、それなりの時間を要した。
 アプリのインストールや設定はほとんど僕が行い、祖母には最低限の使い方に絞って操作を覚えてもらった。
 「慣れれば簡単だから、気軽に連絡してみてね。実際やってみるのが一番覚えると思うから」
 僕はそう言って、祖母の家を後にした。

 僕の帰省が終わって数日経っても、祖母からの連絡は来なかった。
 さらに数日経っても連絡がこないので、僕はラインで祖母に簡単なメッセージを送った。しかし祖母からは一向になんの返事もない。
 少し心配になった僕は、祖母の家の固定電話に電話をかけてみた。
 「スマホちゃんと使えてる?全然返事がないから」僕は電話口で言った。
 「やっぱりちゃんと届かなかったんだね」祖母は言った。
 「やっぱりって?」
 「自信がなかったから『届いてなかったら電話ちょうだい』ってラインを送ったんだよ。だから電話してくれたんだろ?」

エピローグ

 使いこなすにはまだまだ道のりは長そうだが、それでも祖母はスマホを気に入ってくれているようだった。
 別の機会に祖母と会ったとき、祖母は自分でスマホのケースを買っていた。手帳型のスマホケースで、祖母は満足そうに使っていた。
 「ケースもいろいろあるんだねぇ。迷ったけれど、これにしたんだよ。これなら内側にメモ用紙をはさめるから、メモをしたり電話番号を書いておくのに便利でねぇ」

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