シンプルに考える

オムニバス(エッセイ風小説)

シンプルに考えることについて

シンプルに考えることの大切さ

 物事をシンプルに考えることは重要だ。
 しかしそのシンプルさに辿り着くには、複雑な考えが必要なときもある。

 シンプルに見える答えの背景には、たくさんの先人の知恵があるかもしれないのだ。

 例えばスマートフォンは使いたいアプリを直接タップすれば使うことができる。
 この上なくシンプルだ。しかし多くの人にとって、スマートフォンを作ることは簡単なことではない。

 インターネットを使えば知りたいことをすぐに検索できる。五十音の索引から探す必要はない。シンプルだ。しかしそのシンプルさの背景には、複雑な検索アルゴリズムがあるだろう。

 私達は物事をシンプルにとらえる必要がある。
 一方で、目先のシンプルさにとらわれて、複雑さを忌避しても、その先にあるシンプルさに行きつけないかもしれない。

世界の複雑さ

 世の中は単純なような気もするし、複雑な気もする。
 多くの人は自分の生き方に悩んだり、自分と社会とのつながりに悩んだり、世界の在り方(世の中の不平等さとか理不尽さとか)に悩んだりする。
 だからしがらみを抜けてシンプルに生きることに魅力を感じる人は多い。

 人生はシンプルに生きればいいのかもしれない。
 けれど、「シンプルに生きる」ということが教訓になること自体、シンプルに生きることの難しさを物語っている。

巨人の肩に立つ

 先人の知恵や複雑な技術の積み重ねで導き出されたシンプルなもの。それはある意味で、質の高いシンプルさだ。

 簡単なことを複雑にしてしまわない。
 逆に複雑なことは知識や知恵でシンプルな形に落とし込む。
 これがシンプルに生きることの本質である気がする。

自分にとってのシンプルさ・相手にとっての複雑さ

 例えば料理人にとってシンプルな調理も、素人にとっては複雑な工程かもしれない。
 プログラマーにとってシンプルなコードも、素人にはよくわからない文字の羅列かもしれない。
 玄人から見たらこの上なく含蓄のある絵画も、素人にはただの蘊蓄に感じるかもしれない。

 自分にとってのシンプルさが、相手にとっては複雑であることがある。
 逆に自分にとって難しいことが、相手にとっては簡単なことがある。

 知識や技術があると、他人にとっての複雑さが自分にとってはシンプルに感じることがある。
 知識を深め理解を深めていく。それは人生を幾分シンプルにしてくれるかもしれない。

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