フェミニズムに配慮した桃太郎|ショートショート

童話ショートショート

フェミニストに配慮した「桃太郎」

 昔々あるところに、おばあさんとおじいさんが居た。
 おばあさんは山へ芝刈りに、おじいさんは川へ洗濯へと行った。
 ちなみに、おばあさんとおじいさんは家事については平等に分業しており、芝刈りと洗濯は日替わりで交代していた。今日はおばあさんが芝刈りに行く日だったのだ。

 おじいさんが川で洗濯をしていると、川から大きな桃が流れてきた。
 それを持ち帰り割ってみると、中から元気な赤ん坊の女の子が出てきた。
 二人はその赤ん坊を「モモ」と名付け、大切に育てた。
 ちなみに、おばあさんとおじいさんには元々子供がいなかった。結婚した当時、不妊治療外来ではおばあさんだけでなく率先しておじいさんも検査を行ったものの、二人ともはっきりした原因はわからなかった。

 モモは大きくなり、鬼退治に鬼ヶ島に行くと言った。
 そこでおばあさんとおじいさんは一緒にきびだんごを作ってモモに持たせた。
 ちなみに、鬼退治に鬼ヶ島に行く者は以前から居たが、なかなか鬼を倒せずにいた。これまで鬼ヶ島に行った者は男性が五十人、女性が五十人となっており男女比としては半々となっている。

 モモが鬼ヶ島に向かっていると、途中で犬、猿、雉と出会った。
 三匹はきびだんごをもらう代わりに鬼退治に協力する約束をした。
 ちなみに桃太郎が道中で出会ったのは雌の犬、雄の犬、雌の猿、雄の猿、雌の雉、雄の雉であった。
 それぞれに鬼退治の適性をモモが公平に検討した上で、最終的にお供は雌の犬、雄の猿、雌の雉となった。

 モモと三匹は鬼ヶ島を目指し海を渡る。船を猿が漕いで進み、だんだんと鬼ヶ島が見えてきた。
 そして鬼ヶ島に到着する。鬼ヶ島の門を抜けると、そこには村の宝を奪った鬼達が居た。




 モモの冒険の物語はここまでである。
 鬼ヶ島の鬼は全員女性であったのだが、黄色と黒の縞々模様の服で腰と胸しか隠しておらず、その格好に問題があった。その格好は女性の性的消費・性的搾取を象徴するものであり、たいそう不適切であった。
 このためモモの冒険の物語の後半を描くことは自粛する運びとなった。

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