転校生が隣の席に
例えば異性の転校生がやってきて、席が僕の隣になる。
それはなんというかベタ展開なわけなのだが、実際にそれを経験する人は少ない。
他人から見ればどんなにベタでありふれた出来事でも、当人にとっては一度しかない、印象的な出来事であったりする。
要するに、他人から見た人生と、実際に自分が経験する人生では、伴う感情がきっと違う。
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中学三年生の四月、転校生がやってきた。
僕達の中学は過疎地とは言わないが地方にあるこじんまりとした学校で、学年あたりのクラスは二つ。三年生にもなれば隣のクラスも含め知らない生徒はいない。
当然仲が良い生徒・そうでもない生徒はいるけれど、みんなお互いの人となりはわかっている。
毎日同じ顔触れの、新しい人間の出入りがないコミュニティ。
そういう外からの刺激がない集団にとって、転校生という存在は大きい。
転校してきたということは、同じ地域にこれらか住む同い年の生徒のはずなのに、なぜだか異質で自分にないものをたくさん持っているような気がしてしまう。
だからみんな浮かれながら、(今の人間関係が変化してしまうのか)少し不安が混じりながら、転校生に注目する。
担任の先生から小川さんと紹介された転校生は、目鼻立ちははっきりしているがどちらかと言えば童顔な女子生徒だった。
絶世の美人というわけではないけれど(別にひねくれて言っているわけじゃない)、生徒達から「美人な転校生」と位置付けられるには十分な見た目だったのだと思う。
みんなそういう話題を求めているのだ。自分の学校に突然やってきた、美人な(あるいはカッコイイ)転校生。小川さんはそういう役割を当てはめられてしまったのだと思う。みんなが小川さんを好意的な目で見ていた。
「席は左奥の、城山君の隣ね」
先生はそういって、小川さんは軽く会釈をして僕の隣の席に座る。
一番後ろの席に座っていて、隣の席が空いていて、そこに異性の転校生が座る。すごくベタで、安っぽい恋愛漫画みたいだ。そんな展開誰でも思いつくし、そんな展開が現実で起きている滑稽さからか、みんな僕を微笑ましさと冷やかしが混ざったような目で見ている。
☆☆☆
そんな感じで、僕はクラスメイトが注目する美人な転校生と席が隣になった。
ただしそれは生徒が名前順に座ったときの話で、クラスはその直後にくじ引きで席替えが行われる。僕は公正なくじ引きにより、小川さんと距離のある席となった。
現実はベタであると同時に、平凡でもあるものだ。