転校生が隣の席に (5) 気が合う友達

連載小説

第4話「人間関係という島」

第5話「気が合う友達」

「へぇー、行ってみたい」渡辺はそう言った。
 なんの話かと言えば、図書館が改築される話だ。
 電車で数駅離れた図書館。敷地が大きく、小学生の頃は親に連れられよく行っていた。最近は改築工事のため閉館していたが、もうすぐそれが終わるらしい。今風の、ずいぶんおしゃれで快適な図書館になるらしかった。
 学習スペースも充実しているらしく、受験生だし、勉強をするということで行ってみてもいいかもしれない。そんな話だった。


☆☆☆


 転校生の小川さんは最初の印象通り内向的なようで、クラスメイトであっても接する人は限られていた。一人で本を読んでいるか、たまに誰かと居るときはほとんどが北村さんと内藤さんだった。
 小川さんとまだ会話をしたことがないクラスメイトも少なくないが、それはそれで許容される、不思議なオーラが小川さんにはあった。

 そんなわけで、教室で小川さんに話しかけるのはちょっとだけ抵抗があった。僕は北村さんや内藤さんとさして仲がいいわけでもないので、三人で居るときは余計に話しかけにくかった。
 けれど僕は、小川さんの描く絵がけっこう好きだった。小川さんがペンを動かして、それらの線が次第に絵になっていく様子は素直にすごいと思う。僕の周りに、こんなに絵が上手い人は今までいなかった。
 僕は小川さんと、小川さんが描く絵についてもう少し話してみたいとも思った。けれどそれは図書委員の当番の日に限られ、あまり教室でそういう機会は得られなかった。

 結局は気が合うグループが違うのだと思う。
 みんなそれぞれ、気が合う合わないがある。いや、合わないとまでは言わなくても、なんとなくテンポが違う関係性というものがある。例えば僕は渡辺とよく雑談をするが、北村さんや内藤さんとは会話をするのにやや気を遣う。
 なんでだろう。単純に、渡辺とは小学校から一緒で北村さんや内藤さんとはそうでないからだろうか。あるいは、北村さんや内藤さんの、外向的でちょっと人間関係についての頭の回転が速そうなところが、僕は落ち着かないのかもしれない。


☆☆☆


「図書館完成したら一緒行こうよ。城山数学得意だから教えてよ」渡辺は言った。
「別に得意じゃないけど、いいよ」僕は言う。
 こうして僕と渡辺は、時期はあいまいだが一緒に図書館に行くことになった。
 異性の友達と二人っきりでどこかに行くのは、これが初めてだった。






続く(近日公開予定)

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