【ショートショート】優しい人に囲まれて

オムニバス(ショートショート)

優しい人達の中で

 私が傷ついたとき、優しい人達は寄り添ってくれた。
 辛かったね。あなたは頑張ってる。そう言ってくれた。

 私が心ない言葉をかけられたとき、優しい人達は寄り添ってくれた。
 それはひどい。あなたは悪くない。そう言ってくれた。

 私が追い詰められたとき、優しい人達は寄り添ってくれた。
 大変なときは言ってね。無理をしちゃいけないよ。そう言ってくれた。

 私の周りには、優しい人達がたくさんいた。
 私のことを思い、私に優しい言葉をかけてくれる人達。

 たとえ私が特定の人から理不尽な仕打ちを受けても、ここにはそういうことをしない、優しい人達もいた。
 私が受けた仕打ちを知ると、それは違うよね。ひどいよねと共感してくれた。私に寄り添ってくれる人が、私の周りにはいる。
 私が辛い思いをして、頭の中が真っ暗で、何をどうしたらいいかわからないとき、そういう思いを一人で抱え込んでいるとき、優しい人達は私を責めたりしない。
 私の周りには、優しい人達がいる。

 けれど、優しい人達は、私のために立ち上がることはなかった。
 手を挙げてはくれなかった。
 声を上げてはくれなかった。
 私は孤独だった。

 目の前の脅威に立ち向かう人はいなかった。
 自分が傷ついてでも他者を守ろうとする人はいなかった。
 それは間違っていると主張できる人はいなかった。

 みんな自分の安全な場所から、力になるよと言ってくれた。
 けれど自分がそれを背負おうと、手を挙げてはくれなかった。

 みんな自分の安全な場所から、私に声をかけてくれた。
 けれど今この理不尽な状況に、声を上げてはくれなかった。

 それは当然のことなのだと思った。
 誰だって自分のことで精一杯で、誰だって自分を守ることに必死で、誰だって自分が一番可愛かった。
 だから、優しい人達は悪くない。だから、責めることもない。

 それは当然のことなのだと思った。
 みんな自分の安全な場所から、私に優しくしてくれる。
 だから私は、ここからいなくなった。

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