「やる気のある無能」の特徴と例

オムニバス(エッセイ風小説)

ゼークトの組織論における「やる気のある無能」

 諸説あるが軍事ジョークとされる「ゼークトの組織論」では、「やる気のある無能」が一番面倒で、たちが悪いとされる。(このためやる気のある無能は組織から排除したほうがいいとされている)

 これは放っておけば何もしない「やる気のない無能」と違って、「やる気のある無能」は無能なくせにあれやこれやと勝手に動いて周囲の足を引っ張るからだ。

 この「やる気のある無能」という存在について、特徴を掘り下げてみよう。

やる気のある無能の特徴

頑張る方向がずれている

 やる気のある無能は、努力の方向性がずれている。

 頑張る方向がずれているから、無駄な努力をしたり周囲が求めていないことに時間を使ったり、結果につながらない労力を払う。

 結果を出さないだけ、つまり現状を変えないならまだマシだ。
 しかしやる気のある無能の行動の多くは裏目に出る。

 つまり方向性のずれた仕事をして事態をより悪くしたり、取り返しのつかない状況を作ったり、周囲が尻拭いをしないといけないような状態となる。

 なぜそのようなことになるかと言えば、やる気のある無能は人の話を聞かず一人で突っ走るからだ。

人の意見を聞かない

 やる気のある無能は人の意見を聞かず一人で突っ走る。

 要するに「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」ができていない。

 こまめに相談してくれれば、間違った判断は周囲が止めてくれるだろう。
 しかしやる気のない無能ほど(その意思決定が間違っているくせに)周囲に報告しない。

 進捗状況の報告もなければ、事前の連絡もない。
 ただ自分がやりたいことを良かれと思ってやり、周囲に迷惑をかける。

 やる気のある無能は一人で突っ走るので、周囲が想定しないような「馬鹿らしい状態」や「面倒な事態」を引き起こす。

 一言報告してくれれば、きちんと連絡してくれれば、誰かに相談してくれれば、なんとかなったことを勝手に進めてトラブルを起こす。

 なぜやる気のある無能はそうなのか。
 やる気のある無能は要するに自信過剰で周囲が見えていない。

自信過剰

 やる気のある無能は自信だけは一人前だ。

 自分に自信があるから人の意見も聞かず(あるいは人の意見を受け入れず)一人で突っ走る。
 けれど能力がないからその方向性は間違っていて、結果につながらない。むしろ事態を悪化させ周囲の手を煩わせる。

 もちろん、自信があるのは悪い事じゃない。自己肯定感を持てることは大切だ。
 けれど、ここで言う「自信」とはそういう類の自信ではない。

 やる気のある無能は「自分が正しい」「相手が間違っている」といった他者否定を含む自信を持っていて、自分の意見を変えたり他者を受け入れることができない。要するに無駄にプライドが高いのだ。

 無駄にプライドが高いから、周囲に相談できない。なぜなら周囲に相談すれば(無能ゆえにだいたいその意思決定は間違っているので)その提案は却下されるからだ。
 それでも結果を出してその手柄を自分のものにしたいから、一人で突っ走る。

 このように、「やる気のある無能」は「自信過剰→人の意見を聞かない→方向性が間違う」となる。
 そして結果を出せずに失敗したとき、プライドが高いから周囲のせいだとあれやこれやと言い訳をして他責思考となる。そうして余計に人の話を聞かないという悪循環となる。

 ここまでを踏まえ、やる気のある無能はどんな仕事をするのか、その例を見てみよう。

やる気のある無能の例

社外に対して

  • 顧客に対して失礼な事や極端なことを言う。
  • 顧客に対して日時や金額など数字のミスをする。
  • 顧客や営業先を見下している。
  • トラブルの原因を顧客や営業先のせいにする。
  • メールや電話対応が下手である。
  • 外向きの仕事をしたがる。

社内において

  • 改革や大きなプロジェクトをやりたがる。
  • 地味な作業や面倒な作業は(それが自分のせいで生じたものであっても)他人に押し付ける。
  • 他の人がすでにやった失敗をする。(周囲や前例から学ばない。)
  • 何ページにもわたる企画書を勝手に作っていきなり見せてくるが、一ページ目からすでにダメ。
  • 提案や「こうすればいい」といった意見は活発だが、それを現実的・実現可能な方法に落とし込むことができない。
  • 直属の上司を通さず、他部署にできもしないことを言う。
  • 「これはやめておこう」とみんなで情報共有したことを聞いておらず、その「これはやめておこう」をやってしまう。

他者とのコミュニケーション

  • 自信過剰で人の意見を聞かない。
  • 後輩や部下を指導するが、そもそも本人がその指導内容を習得できていない。
  • 後輩や部下を一人前と認めていないが、後輩や部下のほうからは能力がないと思われている。

仕事全般

  • 些細なミスが多い。
  • 報告・連絡・相談がない。
  • 任せられる仕事がない。
  • 忙しそうにしているわりに結果が出ていない。
  • 頼んでないことを勝手にするのに頼んだことはまともにできない。

ゼークトの組織論について

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