おしぼりで口や顔を拭くこととマナー
おしぼりで口や顔、つまり手以外の身体の部分を拭くことについて。
要するに、マナーの観点から厳密に考えると好ましくないが、そこまで厳しく言うほどのことでもない。という類の話だろう。
人によって考え方が異なる話、
年代によって感じ方が異なる話、
じゃあ私自身はどうするだろうかという話。
そういう話だ。
おしぼりで口や顔を拭くことについて考える
おしぼりの本来の用途
食事の場で出されるおしぼりが、本来どういう意図と用途を持っているかと考えれば、それは食事の際に手を拭くためだ。
おしぼりは食事の際に手を拭いて衛生的にするためにある。
もちろん、現代は食事の前に手を洗うことは容易だし、飲食店の入り口には多くの場合アルコール消毒も設置してある。
手指の衛生を、おしぼりのみに頼る必要はない。
だからこれは文化というか、マナーの話なのだ。
おしぼりは手を拭く物とされ、顔などは拭かない。
また口を拭く際は紙ナプキンなどを用いることがマナーとされている。
おしぼりで顔を拭くことがダメな理由
おしぼりは汚れた手を拭く物であるから、それで顔を拭いては衛生的観点から本末転倒だ。
これが「おしぼりで顔を拭くのはNG派」の理屈だと思う。
加えて、ここで言うおしぼりとは布、つまり繰り返して使う物を指す。
洗濯・消毒するとはいえ、不特定多数の人が使う布製品で口や顔といったプライベートゾーンを拭くのはいかがなものか。要するに不快だ。
こういった理由もしばしば挙がるだろう。
しかしいずれも、科学的な根拠としてはいくぶん弱い。
先述の通り現代では手洗い・消毒が容易なわけで、手を拭いたおしぼりで顔を拭くことが直接的な感染経路になる可能性は低いと思う。
また、消毒の技術が進歩している昨今、顔を拭いたおしぼりが次に使う人へ弊害をおよぼすとは考えにくい。
要するに、おしぼりで顔を拭くことがダメな理由は科学的・合理的なものではなくて、文化から培われたイメージによるところが大きい。
食事の際に顔を拭くこと
おしぼりで顔を拭くことについて、少し別の角度でも考えてみたい。
おしぼりで顔を拭きたい人というのは、端的には顔が汚れている人か、整容をして一定時間すでに経ってしまった人だろう。
化粧をしている人は化粧が落ちるからおしぼりで顔を拭くことはないだろう。
日焼け止めなど顔に関する身支度が終わったばかりの人も拭かないだろう。
過剰な皮脂が浮き出ておらず、別に顔が汚れていない人も拭くことはないだろう。
要するに、その食事の場に合わせて身支度を済ませてきた人は、おしぼりで顔を拭く必要がない。
おしぼりで顔を拭く人は、例えば仕事帰りの飲み会のように、別の目的(仕事や用事)が終わった後に食事をする人なのだ。
このような考え方に立つと、おしぼりで顔を拭かないことについてまた別の視点が生まれる。
フォーマルな場や大切な人との会食ほど、その食事自体が「目的」となる。
つまり重要な食事の場面はそれ専用の身支度を済ませて臨むことになり、おしぼりで顔を拭くようなシチュエーションにはそもそもならない。
おしぼりで顔を拭かないこと
おしぼりで顔を拭きたいなら拭けばいいし、別にそれは断罪されるほどのことではない。
しかしおしぼりで顔を拭かなくていいような、身支度をきちんと済ませて臨むような「大切な会食」 の機会があるといいなとも思う。
人生は限られているから、人と食事をする回数というのも限られている。
その限られた食事の何回かは、おしゃれに身支度を済ませた、大切な人と会う時間として使えたらいいなと思う。