伏線だらけの異世界転生(11) 決闘が多い雨天①

オムニバス(ショートショート)

第10話「唐突が多い接点」

第11話「決闘が多い雨天①」

「この前の借りは返してやるからな」
 大男はそう言って私達に近づいてきた。
「しつこい奴だな。この前勝負はついただろ」ミナトは言う。
「あんな負け方したんじゃあ、俺も仲間に申し訳ねぇ。お前らぶちのめして、こんな始まりの町とはとっととおさらばだ
 大男はそう言いながら拳を握ったり開いたり、腕を回したりする。戦闘態勢といった感じだ。
「どういこと?」私は小声でツキに聞く。
「うーん、つまり、彼も異世界から来た人で、ヒカリと僕達の関係のような仲間がいるってことだろうね。魔物と戦うにはそれなりに強くないといけないし、強くなるためにミナトに勝ちたいんだろうね
 ツキの解説を聞いて私は少し驚く。あんなに短気で好戦的な人に、仲間がいるのかと。いずれにせよ、この大男も異世界から来た人なのか。
ねぇ、戦わず少し話をしない? ここで争ってもしょうがないじゃない」私は大男に話しかける。
「ああ? ふざけたこと言ってんじゃねぇ。こっちはお前らぶちのめしに来たって言ってんだろ。てめぇには袱閃ばらされた借りがあったな。お前も逃がしゃしねぇからな」
 第一印象通り血の気の多い大男は、やっぱり私の話に耳を傾けてはくれなかった。
「ヒカリ、こんな短気な奴何言っても無駄だ」
 ミナトは私にそう言って、それが煽りとなって大男はミナトに向かって拳を振り落とした。
 ツキは私を抱えて大男から距離を取る。ミナトは攻撃を避け、戦闘態勢を取る。大男は素手で岩を砕く。人間離れした力。きっと魔法だ。
「ねぇ、なんで魔法使えるの?袱閃ってバレたら力弱くなるんでしょ?」私はツキに聞く。
「おそらく、袱閃を練り直したんだよ。この前、彼の袱閃は『攻撃を右手のみに絞ることで攻撃力を上げる』というものだった。けれど今はそれとは異なる袱閃を使っているんだ。あれだけ短気なのに今日までミナトに絡んでこなかったのは、おそらく新しい袱閃を練っていたんだと思う」
 私だけじゃなくて、あの大男も修業をしていたのか。そんなふうに関心しながらも、だとしたら厄介だなと思う。あんな強烈なパンチ、当たったらただじゃすまない。

 ミナトと大男の決闘、というか逆恨みからの喧嘩が始まってしまった。

第12話「決闘が多い雨天②」

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