伏線だらけの異世界転生(10) 唐突が多い接点

オムニバス(ショートショート)

第9話「謎が多い特異点」

第10話「唐突が多い接点」

 魔法の覚えが悪い私だが、それでもミナト・ツキ・フウちゃんは肯定的に接してくれる。
 きっと異世界の冒険に必要なのは、チートスキルじゃなくて良好な人間関係なのだ。と私は思う。あぁでも、それは元の世界でもきっと同じなんだろうな。
 いずれにせよ人間関係に恵まれていることは、右も左もわからない異世界に来た私にとって、唯一ともいえる救いだった。

「普通は魔力を外に出すと個性が出るもんなんだ」ミナトは言う。「例えば俺がこの岩に触れて魔力を流すと」
 ミナトはそう言いながら岩に手を置き、魔力を流す。岩にわずかなひびが入る。
俺の場合は『砕く』ような力が流れるんだ。もちろんこれは人によって違う
 どうやら私の魔力には個性がなく、だからどんな技をイメージしたらいいか、そのヒントが得られないらしい。さて、どうしたものか。
「まぁ、循環も袱閃もぼちぼちやっていこう。魔力の上達速度や特性は人によって違う。ミナトだって人とちょっと違う所はあるしね。とりあえず循環の練習をしながら、時々フィードバックをしてみよう。何か状況が変わるかもしれない」ツキはそう言ってフォローしてくれる。
「そうは言ってもいつまでも町で過ごすわけにもいかないだろ? いずれは旅に出ないと」ミナトは言う。
「もちろん。ある程度の目途がったら出発しよう。幸い、ヒカリも多少は循環で身体強化ができるようにはなってきたし、僕達がフォローすればクラヤミと遭遇しても大事には至らないだろう。それに、実戦の中でヒカリの特性や強みがわかる可能性だって充分にある
 私は二人の会話を聞きながら、私はなんだか申し訳なくなる。けれど、私にするべきことやできることは限られているし決まっている。結局のところ私は私のペースで練習をするしかない。そう思えるのは、二人が私のことを「足手まとい」じゃなくて「仲間」だと思ってくれているからだと思う。みんなに会って間もないけれど、私はそのように感じる。

「ここに居やがったか」
 会話に割って入るように声がする。振り向くと、どこかで見た人。ああ、そうだ、店内でミナトと揉めたあの大男だ。
「この前はよくもやってくれたな。お前らまとめて叩き潰してやる」

 この前ミナトと揉めた大男は、一緒にいる私やツキまで目の敵にしているようだ。
 どんな世界でも、根に持たれたり会うと気まずい関係ってあるんだなと私は思う。人間関係って難しい。


第11話「決闘が多い雨天①」

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