第7話「修行で多い共通点」
元の世界に戻にはどうしたらいいのか。そもそも私の記憶は戻るのか。
この世界に来た私は、右も左もわからず考えることが多すぎて、頭がパンクしそうになる。考えすぎることは良くない。自分を保つため、私は自分にそう言い聞かせる。それが気休めであると、内心わかってはいるのだが。
「旅の道中で経験できることは多いと思うけれど、それでも最低限の魔法は使えたほうがいいと思うよ」
宿屋でそう提案したのはツキで、フウちゃんもそれに同意した。ミナトはソファでうたた寝をしていた。
そういうことで、私は魔法の修業をすることになった。
「魔法の使い方を教えてくれないかな?」
うたた寝をしているミナトを起こし、ツキはそう言った。
「え、俺?」ミナトはなんで俺と言わんばかりにツキに聞く。「ツキやフウのほうが詳しいじゃん」
「人に教えるのは自分が理解することにも役立つんだ。それに、異世界から来た者同士、魔法を覚えるための感覚も話しやすいんじゃないかな」
ツキはそう説明し、ミナトはそれに同意する。
そういうことで、私はミナトと町外れの広場に行く。ツキも一応付き添ってくれることになった。フウちゃんは一旦店に戻ると言った。
その広場はところどころに岩はあるが他には何もない殺風景な場所だった。きっと魔法の練習とか決闘には都合がいいのだろう。ここならきっと炎を出しても氷を出しても差し支えない。私はどっちも出せないが。
私とミナトは広場の中央付近に立ち、ツキは片隅の岩に腰かけ本を読んでいる。
「とりあえず、自分の魔力を感じるとこからな」ミナトは私に言った。
「魔力を感じる?」
「目を閉じて心を落ち着けて、ゆっくり息を吸って吐く。吸った空気が腹のあたり、身体の真ん中で一旦とどまる感覚をイメージするんだ」
空気はお腹じゃなくて肺に入るけどと思いながら、私は言われた通りにする。
「雑念は捨てろよ。考え事していると意味ねぇから」
まるで瞑想だなと思いながらも、ああそっか、そういうこと考えちゃいけないんだと考え直す。頭の中を空っぽにするのって、意外と難しい。私は呼吸に専念する。
「身体の力を抜いて、頭を空っぽにするんだ」静かな口調でミナトは言う。
私は身体の力を抜いて頭を空っぽにしていく。雑念を取るのは難しい。それでも心を落ち着けていくうちに、だんだんと何も考えないという感覚がわかってくる。息を吸って、吐いて。吸って、吐いて……
「!」
身体の中に、淡い炎のような球体があることを感じる。今までにない感覚だ。思わず私は目を開ける。
「それが魔力の核だ。とりあえず感覚はわかったみたいだな」ミナトは言う。
考え過ぎは良くない。それは気休めではなく、確かに物事を前に進めるようだ。