第12話「決闘が多い雨天②」
ミナトと大男の喧嘩というか決闘というか、戦いが始まってしまった。
「ミナトには悪いけれど、ヒカリにとってはいい機会かもしれないね」ツキはそう言った。
「どういうこと?」私は聞く。
「魔力の循環をやってみよう。魔力を目の方に流す感覚で、コントロールしてみて」
ツキはそう言って、私は言われた通りにやってみる。ゆっくりと魔力が目や顔を包んでいく感覚。すると視界が以前よりもスッキリと明瞭に見える。目にも止まらぬ速さで動いていると思っていたミナトと大男が、今ならなんとか目で追える。
「生身の状態では、魔法で身体強化した人間の動きに対応するのは難しい。もし攻撃の矛先がこっちに向いたら僕が守るから、今は二人の動きをしっかり把握することをやってみて」
ツキにそう言われ、私は二人の戦いを見ることに集中する。
大男は次々とミナトに攻撃し、ミナトはそれを上手く避ける。しかし両手での攻撃の連続。ついに大男の左拳がミナトに入る。ミナトは大きく後ろに跳ばされるが、攻撃自体は左手で受け止め怪我はない。
「両腕で攻撃している様子を見ると、袱閃の制限だけじゃなくて効力も変えたみたいだね」ツキは言う。
「例えば『腕だけで攻撃する。代わりに腕力がすごく強くなる』とか?」私は思い付きで言う。
「お前邪魔だな」
大男はそう呟いて私に間合いを詰めてきた。まずい、余計な事言ったかな。ツキは身構えるがすぐにミナトも駆け寄る。
「今は俺が相手だろ」
ミナトはそう言って左拳を大男に入れる。大男はそれを両手で受け止めるが、激しく吹き飛ばされる。立ち上がるがダメージも多少あるようだ。ミナトは軽く殴った様子だが、一発の攻撃力はミナトのほうが高いようだ。
「立ち上がるってことはまだ魔法使えてるな。ヒカリが言った『腕だけで攻撃する』ってのはミスリードか。いや、蹴りは全然ねぇし、攻撃方法を腕だけに絞ってるのは図星だろうな」
ミナトはそう言いながら、立ち上がる大男の前に立つ。
「どういうこと?」私はツキに聞く。なんだか私は聞いてばっかりだ。
「つまり、彼は確かに『腕だけで攻撃する』魔法を使っている。けれど『なぜ腕だけでしか攻撃できないのか』、その理由があるんだ」ツキは私に解説してくれる。
大男は多少の負傷はあるもののまだ戦えるようだ。魔力の流れを感じる。大男は身体に魔力を流し一気にミナトとの距離を詰める。そして両手でミナトを狙った。
「理由って、例えば『指輪をはめた場所だけ力を使える』とか? あの人、この前と違って今日は両手に指輪付けてるよね」
ミナトが攻撃を避けると男の両手は岩にぶつかる。岩は砕けることなく、そこにあった。
「ヒカリは本当によく人を見ているね。彼の魔力が途切れた。どうやら当たりみたいだよ」
私は思った。ネタバレ、二回目だ。