「悲しい」という気持ちを大切にする

オムニバス(エッセイ風小説)

「悲しい」という気持ちを大切に。

 悲しいという気持ちを大切にすることは、大切だ。

 悲しいとは一般的にネガティブな感情だ。
 だから多くの人は、できるだけ悲しまないようにしたいと考える。
 悲しい出来事に直面しないようにし、もし悲しんでもその気持ちを抑えようとする。
 悲しさを見ないようにし、悲しさを忘れようとし、涙を流さないようにする。

 それは時として正しいが、時として間違っている。

 人にとって「悲しい」という感情は、確かに存在する。
 多くの人は生きていく中で何かしらの悲しい出来事に遭遇する。
(それは悲しいことだが事実なのだ)

 そんなとき、自分の悲しいという気持ちを押し込めてしまえば、感情に蓋をしてしまえば、いつしか自分にとって何が「悲しい」かわからなくなってしまう。
 それは「嬉しい」とか「楽しい」とか、「愛おしい」という感情もわからなくしてしまう。
 自分の感情を自分で損なってしまうほど、悲しいことはない。

 だから悲しいときに「悲しい」と素直に思えることは大切なのだ。
 何かを悲しむことができるのは、何かを愛おしいと思っている証拠だからだ。

 誰かを失って悲しいと思えるのは、その誰かを愛しているからだ。
 何かを見て悲しいと感じるのは、そこにあったものに愛おしさを感じるからだ。

 悲しいときは悲しんでいい。
 涙を流し、自分は悲しいんだと認めていい。
 悲しいと素直に思うことで、自分にとって愛おしいものがなんなのか見えてくる。

 愛おしいものが失われたときに素直に悲しむことができれば、
 まだ自分が持っている愛おしいものにも気づくことができる。

 その愛おしさに気づくことができれば、私達はそれを大切にすることができる。

 私達は、自分の感情を偽り損なってはいけない。
 悲しいときには、悲しんで、自分の感情を認めてあげればいい。
 何が悲しいのか、何が嬉しいのかがわかれば、私達は何が愛おしいのかがわかる。
 そういうものを大切にすればいい。
 人生は限られているから、私達は自分の心が大切にしたいと思うものを大切にしたらいいのだ。

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