質疑応答で自分語りをする人

オムニバス(エッセイ風小説)

質問すると見せかけて自分語りをする人

質疑応答で自分語り

 質問をすると見せかけて、自分語りをする人がいる。

 誰かの発表や講義が終わった後に「私も○○については経験があり重要性を感じております。五年ほど前になるのですが今回のようなケースを対応したことがあり、そのとき私は当時からこれがこれからの時代は重要になるという直感がありました。当時私は手探りながら原因を究明してなんとか解決に至ったのですが、その当時はこういったケースが他になく周囲で指導してくれる人もいなかったので今の人はこういう場があるのでとても恵まれていると感じており……」

 質疑応答の時間に自分がいかに「すごい人間か」をアピールしたい人がいる。
 質疑応答の時間に自分がいかに「わかっている人間か」をアピールしたい人がいる。

 そういう人は、総じて煩わしい。

なぜ質問の時間に自分語りをするのだろうか

 なぜ質疑応答の時間に自分語りをする人がいるのだろう。そういう事態が発生してしまうのだろうか。理由は大きく二つあると思う。

 一つは質問者のコミュニケーションが一方的である点だ。
 二つ目は、質疑応答という独特の環境が人に自分語りをさせるのだ。


 一つ目のコミュニケーションが一方的であるという点。これは文字通りでそれ以上でも以下でもない。
 本来は適切な質問を行い発表者の知識を掘り下げ参加者と共有し、場をより有意義なものにするのが本来の質問だ。自分語りをする人はそれができない。
 コミュニケーションは一人で成立するものではないし、時には自分が一歩引いて場を引き立てることが重要という概念が希薄なのだ。

 二つ目の、質疑応答の時間特有の環境について。
 質疑応答の時間というのは、日常会話とはまた違う特殊な状況だ。質疑応答の時間は、自分が話すことと相手が聞くことの両方が担保されている。
 例えば日常会話では、つまらない人間のつまらない会話は聞いてもらえないし、聞いてもらえないということは話す機会もない。(そういうときに話を聞いてくれるのはお金を払って時間を買うホストやキャバクラくらいだ)
 仕事中は上下関係があるから、まだつまらない話を無理矢理する機会はあるかもしれない。しかし昨今はパワハラ問題もあるから少なくとも昔よりは難しいだろう。
 講演会などもそうだ。つまらない話では人は集まらない。あるいは、つまらない話をすれば評価は下がり次からは呼んでもらえない。

 その点、質疑応答の時間は楽だ。
 質疑応答では、少なくとも発表者が自分の話を聞いてくれる。他の参加者は静かで、自分の話を遮ることはない。質疑応答の時間は、つまらない話しかできず普段話を聞いてもらえない人にとって、自分語りをする絶好のチャンスなのだ。

 以下で、自分語りの例を見てみたい。

自分語りの具体例

 質疑応答で自分語りをする人は、聞かれてもいないのに自分の経験談を話す。

「私は以前○○で指導をしていた経験から今回の公演は非常に共感する物がありました。私の場合は今回の公演と異なり独自の方法で問題を解決してきたわけですが、それと比較すると今回の公演は……」

 要するに自慢話、いかに自分を大きく見せたいかに質疑応答の時間を使う。

 また、質疑応答で自分語りをする人は、重要だと思うところや問題提起がずれていることが多い。

「今回の製品のプレゼンで気になったのは高齢の消費者には製品が扱いづらいのではないかという点です。スマホが普及したとはいえまだまだ高齢者にとってデジタルデバイスやインターネットの使用は不慣れなことが多く、私も実際高齢者の顧客を対応していると……」
 ちなみにこのプレゼンは二十代をターゲットにした商品のプレゼンであるしそのことを冒頭で説明しているが、質問者はそのことを忘れている・あるいはちゃんと聞いていない。

自分語りする人への対応方法

 質疑応答で自分語りをする人への対処法はいくつか考えられる。
 そのうち最もシンプルで重要な対策法は、タイムキーパーを設けることであろう。

 タイムキーパーは司会と同じくらい重要である。あるいは司会がタイムキーパーとして時間配分を気にすることは大切である。
 事前に所要時間を伝えてその時間になったら場を切ることが重要だ。
「質問は一人一回、三十秒以内にお話しください」
 このように、所要時間を事前に周知しそれを守るよう進行していく。

 その他の対処法としては、参加者を厳選するというのもある。
 不特定多数ではなく、有意義な時間・有意義な知識の共有をできるメンバーにあらかじめ声をかけることも重要だ。

 あるいは、録画をしたり関係各位を同室させて様子が見えるようにする。
 多数の目に晒すことで、不用意な発言は控える抑止力になる。仮にそういった空気を気にしない人間がいたとしても、次回そういう人間を呼ばない理由と証拠が手に入る。

 このように、質疑応答で自分語りをする人を回避するには、そもそも「無駄なものは切る」という覚悟が必要になる。
 そう、時間は貴重なのだ。
 ということで、私も自分語りはこのくらいにしたいと思う。

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